◆TM文書が波及させた政権中枢への疑念

安倍氏は前述したように22年7月8日、近鉄大和西大寺駅北口前で佐藤議員の応援演説中に銃撃された。実はこの日、佐藤氏が、自身のために統一協会が開いた応援集会(午前10時開始)に招かれていたというのだ。佐藤氏は、安倍氏が突然、自身の応援のために奈良に来たため、この集会に出られず、妻が代理出席したという。
佐藤氏は奈良地裁・山上さん裁判の第2回公判に、検察側の最初の証人として出廷し、山上被告を「民主主義に対する冒涜(ぼうとく)したテロリスト」と断じて厳罰を求めた。佐藤氏は自民党の調査に、この事実を報告していない。佐藤氏は文春の取材に答えていない。
山上被告は被告人質問で、事件を起こす約1時間前、現場となった近鉄大和西大寺駅近くの商業施設で期日前投票を行い、佐藤氏に投票したと明かした。
旧安倍派の佐藤氏は政治資金収支報告書への不記載が判明している。2022年までの5年間で総額306万円を派閥から受け取っていながら、政治資金収支報告書に記載していなかった。選挙の「禊」を受けないまま内閣の要職に就いており、参院自民党からも反発があり、参院の議院運営委員会の理事会などに出席できず、参院内で理事会等への出席が制限されている。
爆笑問題の太田光氏は18日放送のTBS「サンデージャポン」で、佐藤官房副長官が安倍氏の事件前に開かれた統一協会主催の自身の選挙応援集会があったことを隠していたことに言及し、解散騒ぎがなければ政権が吹っ飛ぶような事案だと言い切った。
私は山上さんの15回の公判すべてを記者席で取材したが、佐藤氏は「総理が2度目の応援で急遽、奈良に来てくれることは前日夕方に決まった。当日、別の予定があったが、取り止めて安倍総理の演説会場に行った」と証言していた。佐藤氏は法廷で、当時元首相の安倍氏を一貫して「総理」と呼んだ。
◆問われる証言の信頼性と、TM文書の検証責任
佐藤氏の「統一協会癒着隠し」については、元信者のジャーナリスト多田文明氏が17日、<安倍元首相を銃撃した山上被告の裁判 検察側の証人として出廷の自民党議員 事実を伏せての証言なら大問題>と題して鋭く批判している。多田氏はこう書いている。
<これが事実なら被告の命を左右する法廷の場において、真実を伏せたまま証言したことになります。同議員からの弁明はいまだありませんが、そうしたなかで山上被告の判決が出されようとしています>
<事実を伏せたままと政治テロという強い言葉だけで証言したことは、被告の命が危険にさらされることにつながりかねない看過できない行為です。(略)教団とのつながりを伏せたままの証言は絶対にあってはならない>
<佐藤議員は高市早苗首相も重用する人物ゆえ、これまでの教団との関係を含めて、国民に対して速やかに嘘偽りなく語るべき時を迎えています>
「TM文書」に書かれた様々な「事実」が真実かは、なかなかわからない。高市総裁が率いる自民党は、自民党議員と統一協会の関係について、第三者委員会による調査をすべきだと思う。また、日本の報道各社は、「TM文書」について事実関係を調べて報道すべきだ。<取材・文/浅野健一>
【浅野健一】
1948年、香川県高松市生まれ。72年、共同通信社に入社。84年『犯罪報道の犯罪』(学陽書房)を発表。ジャカルタ支局長など歴任。94年に退社。94年から2014年まで同志社大学大学院メディア学専攻教授。人権と報道・連絡会代表世話人。『記者クラブ解体新書』(現代人文社)『安倍政権・言論弾圧の犯罪』(社会評論社)『生涯一記者 権力監視のジャーナリズム提言』(社会評論社)など著書多数。あけび書房から2月、『自民党は解党・解散せよ 統一協会・裏金・軍拡の政党は不要』と『安倍元首相銃撃・山上徹也さん裁判傍聴記』を緊急出版する。現在、予約を受け付け中。詳細はあけび書房のHPを参照。 Xアカウント:@hCHKK4SFYaKY1Su

