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満員電車、社畜生活からの解放…東京在住・世帯年収1,320万円だった30代夫婦、「地方移住」でのびのび快適な生活のはずが、待っていたのは「銀行からの残酷な宣告」

満員電車、社畜生活からの解放…東京在住・世帯年収1,320万円だった30代夫婦、「地方移住」でのびのび快適な生活のはずが、待っていたのは「銀行からの残酷な宣告」

東京と地方の経済格差は、大きな開きがあります。厚生労働省の調査によれば、平均年収が最も高い東京都と、最も低い県との差額は約223万円。これは生涯換算すると、実に8,000万円以上の格差となり得ます。しかし、その一方で、「都道府県魅力度ランキング」では、年収が低いとされる県が上位にランクインすることも珍しくありません。満員電車や競争社会といった都会の喧騒から離れ、「自然豊かな環境で、のんびりと」といった理想を抱き、地方へのUターン移住を検討する人が増えています。実情をみていきましょう。

疲弊した30代夫婦、故郷へのUターン移住を決断

ナオキさん(仮名/35歳)は、宮崎県出身。都内の大学を卒業後、そのまま東京の企業に就職しました。妻のカンナさん(仮名/32歳)も同じく九州地方出身の看護師。2人の子宝にも恵まれ、世帯年収は1,320万円(夫810万円、妻510万円)と、不自由のない生活を送っていました。

しかし、ナオキさんは2年前の部署異動により、ストレスから心身のバランスを崩しがちに。ときには満員電車から飛び降り、駅のトイレで嘔吐してしまうことも。カンナさんも、深夜勤務が続き、夫との生活リズムの違いに辟易していました。「社畜生活はうんざりだ。故郷に帰り、もう一度やり直したい」そんな2人の思いは日に日に増し、Uターン移住を実行します。

移住先の宮崎県で、ナオキさんは地元の企業に転職し、年収420万円。カンナさんは夜勤のないクリニックに再就職し、年収300万円。世帯年収は720万円と、東京時代の約6割に減少しましたが、ナオキさんの心身の不調は劇的に改善していきます。ナオキさんは趣味のバンド活動に励み、カンナさんも娘と一緒にピアノのレッスンに通いはじめました。東京に住んでいたときよりも、お互いの実家が近くになったため、子どもたちを預け、夫婦水入らずで外食に出掛けることもできるように。

故郷での暮らしに安心感を覚え、夫妻は次第にマイホーム購入を検討します。

「地方だから土地は安いはず。郊外に大きな家を建てて、子どもたちをのびのび育てたい」

夫婦の夢は膨らみ、総額4,500万円の、庭付きの立派な注文住宅の計画を立てました。

銀行のローン審査で突きつけられた、衝撃の未来

住宅メーカーの営業担当者からも「問題なくローンを組めるでしょう」と太鼓判を押され、地元の銀行へ住宅ローンの相談に訪れました。

源泉徴収票や物件資料を提示するナオキさん。応対した融資担当者からは後日、融資審査結果を伝える旨を告げられ、その日は帰宅します。

夫妻はすっかり安心し、夢のマイホームのことで頭がいっぱいに。しかし数週間後、担当者からかかってきた電話の内容は、信じられないものでした。

「申し訳ありません。審査部のほうで、融資の承認が下りませんでした」

驚くナオキさん。理由を聞いても「総合的判断で」とのことで、詳細を聞くことはできません。納得できず、住宅メーカーに相談へ行きました。そこで指摘されたのは下記の2点。

・転職直後で勤続年数がリセットされている

・収入が大幅に減少しているが、それにもかかわらず貯蓄が少ない

多くの金融機関では、住宅ローンの審査基準として「勤続1年以上(場合によっては3年以上)」を設けています。ナオキさん夫婦は、宮崎にUターン転職してからまだ1年未満。東京での勤務実績は考慮されず、機械的な審査基準によって「安定した収入が継続しているとは判断できない」とみなされた可能性があります。

また、ナオキさん夫妻は、東京で世帯年収1,000万円を超えていたにもかかわらず、現在の貯蓄額が300万円です。この場合、家計の収支構造に問題がある可能性が高く、その状態で新たに4,500万円のローンを組むのは、将来の教育費や不測の事態を考慮すると、リスクが高すぎると判断された可能性があります。

Uターン移住という大きな決断が、思わぬ形でマイホーム計画の足枷となってしまった瞬間でした。

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