◆もし第三者が購入していたら…買主はどうなる?
もしこの不正登記された不動産が実際に第三者に売却されていた場合、購入者はどうなるのだろうか。「まず、不動産に関しては、結論として、不動産を取得することは困難です。日本の法律上、たとえ登記簿上に名前があったとしても、それが偽装された無効な登記であれば、不動産を買っても自分のものにはできません」
そのため、代金を払ってしまった被害者は、「地面師」たちにお金を返してもらうよう、弁償を求めるしかない。しかし、現実はさらに厳しい。
「組織的な犯罪の場合、『地面師』たちはマネーロンダリング・海外送金等によって代金の行方をくらましてしまっていることがほとんどでしょう。特に今回、その場で現金の受け渡しによって決済されたということで、犯人らの口座を追跡し差し押さえることも不可能です」
◆地面師被害はどんな物件でも起こり得るのか
地面師が狙う物件には、「成功しやすいか」「見返りが大きいか」という2つの視点があるという。「成功しやすい物件としては、『長期間放置された空き家・空き地』『管理が行き届いていない物件』『所有者が個人、高齢、遠方在住のケース』などが典型です。これらの場合、物件の実態を把握している関係者が少なく、取引過程で違和感を察知されにくいためです」
今回の事件でも、物件は高齢女性が所有している、活用されずに放置されていた空き物件だった。また、詐欺としてリターンが伴うかという点も地面師たちの関心であり、「本件では、大阪ミナミの地価が上昇していたという背景が犯行を後押ししたと考えられます」と南澤弁護士は分析する。
今後の懸念事項として、南澤弁護士は次のように警鐘を鳴らす。
「近年、特に都心部でのタワーマンション価格が高騰し、外国人を含めた遠方の所有者が投資目的で購入・取引するケースは増えています。ここに地面師が介入する可能性もあるのではないか、と感じます」
不動産取引におけるデューデリジェンス(適正評価)の重要性が、今後ますます高まりそうだが、いずれにしろ、ドラマの話だと思っていた地面師詐欺は、現実のすぐ隣にあるということは確かなようだ。<取材・文/日刊SPA!取材班 監修/アディーレ法律事務所 久木克則 司法書士>

「パチスロで学費を稼ぎ、弁護士になった男」という異色の経歴を持つ。司法修習時代は、精神医療センターにて、ギャンブルを含む依存症問題について研修を受けた経験があり、一般市民の悩みに寄り添った、庶民派の弁護士を志す。アディーレ法律事務所・北千住支店長として対応した法律相談数は、累計数千件に及び、多様な一般民事分野の処理経験を経て、現在は交通事故部門の責任者となる。
【南澤毅吾】
アディーレ法律事務所。「パチスロで学費を稼ぎ、弁護士になった男」という異色の経歴を持つ。司法修習時代は、精神医療センターにて、ギャンブルを含む依存症問題について研修を受けた経験があり、一般市民の悩みに寄り添った、庶民派の弁護士を志す。アディーレ法律事務所・北千住支店長として対応した法律相談数は、累計数千件に及び、多様な一般民事分野の処理経験を経て、現在は交通事故部門の責任者となる。

