
◆新幹線に乗って遠距離彼女の元へ
今回取材した宮内さん(仮名・29歳)は、開口一番、こう話し始めました。「いや、本当にこの三連休だけは、何があっても成功させたかったんです」
宮内さんが言う“成功”とは、関西で暮らす恋人との再会のことです。大学時代に関西で知り合い、社会人になってからは遠距離恋愛。
仕事の都合も重なり、実に半年ぶりのデートになるとのことでした。行き先はUSJ。王道とも言える選択ですが、それだけに外したくなかったそうです。
新幹線の指定席は1か月前から予約していました。しかも窓側です。
「富士山、見たかったんですよ。久しぶりに」
その言葉どおり、当日は天候にも恵まれました。発車後しばらくして車窓に現れた富士山は、雪をまとい、くっきりとした稜線を描いていたといいます。
「やっぱりいいなあって。ああ、始まるなって思ったんです」
指定席特有の落ち着いた空気、車内販売のワゴンが近づく音、富士山にカメラを向ける乗客たちの気配。そのすべてが、これから始まる三連休の前奏曲のように感じられたそうです。この時点では、彼自身もこの後に起こる出来事を想像すらしていなかったと言います。
◆三島駅を過ぎて現れた男

「なんというか……、映画で見るやつです。ウォーキングデッドみたいな感じでした」
現れたのは、ねずみ色のコートのような上着を羽織り、レゲエミュージシャンのボブ・マーリーを思わせる髪型の男性でした。背中には、サンタクロースが背負うような大きな袋を担いでいたそうです。元は白だったと思われるその袋は、いつの間にかベージュを通り越し、色味を失っていました。
その男性は車内をきょろきょろと見回しながら、ゆっくりと歩いてきます。
「その時点で、正直、嫌な予感はしていました」
それでも宮内さんは、自分に言い聞かせたと言います。
「人は見た目で判断しちゃいけない、って」
しかし数秒後、その予感は現実になります。男性は何も言わず、例の袋を荷物棚に押し込み、宮内さんの隣の席にどさりと腰を下ろしたのです。
「え、ここなのか……と、頭の中では思いました」
その男性は、座席に座るや否や、うとうとし始めたそうです。

