過去5年間のSNS履歴の提出、教育現場での禁書…アメリカで進行する言論統制。日本人も他人事とは言い切れない理由

過去5年間のSNS履歴の提出、教育現場での禁書…アメリカで進行する言論統制。日本人も他人事とは言い切れない理由

アメリカで国家単位の「言論統制」政策が進行している。トランプ政権は’25年12月、日本人を含む外国人観光客に対し、過去5年間のSNS履歴の提出を義務化する案を官報で告知した。60日間の意見公募の後に導入する予定だ。有色人種やLGBTQなど特定のテーマを対象とした図書に対する禁書運動も加速している。言論や学問の自由を尊重してきた「自由の国」で、いま何が起こっているのか。現地で出版関係の仕事に携わる鈴木薫さん(仮名)に話を聞いた。

◆「政権批判を口にしない」と決める日本人が急増

ニューヨークに佇む自由の女神(写真:Adobe Stock)
 今回取材を行うにあたり、鈴木さんからは「匿名を条件に取材を引き受けたい」と申し出があった。トランプ政権による不法移民の取り締まりが厳しさを増す中で「アメリカの日本人社会ではたとえ合法的に入国していても、『政権批判は口にしない』と決める人が増えています」と鈴木さんは語る。

「保守色の強い南部のテキサス州で働く知人の日本人ビジネスマンは、仕事仲間のアメリカ人のホームパーティーに招かれた際にトランプ政権について意見を求められたものの、警戒して口をつぐんだと話していました。移民の出入国は国家が完全にコントロールしています。もしどこかから移民・税関捜査局(ICE)に情報が洩れれば、今後、アメリカへの入国も叶わなくなってしまう可能性が高い。投票権以外は米国民とほぼ同じ扱いをされるはずの永住権(グリーンカード)所持者でさえ、『次は自分たちの番かもしれない』と身構えています」


◆LGBTQや人種をテーマにした書籍が「禁書」扱いに

アメリカ・テキサス州の本屋(鈴木さん提供)
「表現の自由」に圧力がかけられているのは、移民だけではない。アメリカの学校や地域の図書館では、有色人種やLGBTQをテーマとした書籍を「禁書」扱いする動きが急速に進行しているという。

 編集者やライターらで組織し、表現の自由の保護に国内外で取り組む非営利団体「ペン・アメリカ」が’25年10月に発表した報告書によれば、’24年7月〜’25年6月にかけてアメリカの学校で禁書となった事例は6870件にのぼり、うち3752タイトルの書籍が撤去された。

「禁書」は、23州の87公立学校区で確認され、フロリダ州が2304件で3年連続の1位。次いでテキサス州が1781件、テネシー州が1622件と、保守色の強い3州が、全体の83%以上を占めた。「ペン・アメリカ」は「禁書がアメリカ社会のニューノーマルになっている」として警戒を強めている。鈴木さんは言う。

「アメリカでは『禁書』の動きは以前からありましたが、トランプ大統領が政治の表舞台に現れてからさらに目立つようになりました。’21年以降は、州レベルで書籍の規制を可能とする法律が次々に成立しています。流れは様々で、保守系団体が学校や公立図書館に直接クレームを入れ、校長や館長がそれに従って本を撤去するケースもあれば、州法などに基づき、保守系団体が行政に異議申し立てを行った上で撤去されるケースもあります。申し立てが受理されると審査結果が出る前に撤去されるため、事実上、審議は行われずに撤去がそのまま放置されたり、トラブルを恐れて校長や館長が自主的に撤去してしまったりするケースもあるようです」


配信元: 日刊SPA!

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