「あおぞら銀行」の行員が、内部通報後に受けた懲戒処分を巡り損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決が1月22日、東京高裁で言い渡された。
高裁は、不動産信託部門での勤務配置と懲戒処分について「人事権の濫用」「パワーハラスメント」に該当すると判断。原告の請求を全面的に退けた一審判決を変更して銀行側に約840万円の支払いを命じる逆転判決を下した。
不適切処理を指摘後、懲戒処分受ける
訴訟の背景は、顧客の相続に関連する業務において、同僚が不適切な処理を行っているとして、原告のAさんが上司に対応を求めたことに遡る。しかし上司が改善の動きを見せないため、Aさんは銀行の内部通報窓口に通報することを決めた。
内部通報後、銀行側はAさんに対し「10項目の問題行為」を指摘し、懲戒処分を実施。これに伴い、Aさんは従来の業務フロアから異なる配置へと転属させられた。
「配置された部屋は広さ8畳ほど。パソコンのモニター、キーボード、マウスのみが置かれ、ゴミ箱がなく、シュレッダーは人事部長に依頼する仕組みでした」
Aさんが業務を行っていた部屋は、従業員の執務フロアではなく来客用フロアに位置しており、この状態が2021年から2024年7月までの約3年3か月間続いたという。
加えて、Aさんは社内規定で全職員が記載されるはずの「災害時初動対応計画」における緊急連絡網から、この期間中除外され続けていたとのことだ。
「長期間にわたる隔離配置、パワハラに該当」
一審の東京地裁は2025年3月、Aさんの請求を全面的に退けた。
一審ではAさんの業務環境について、銀行による「大きな窓があり外の景色が見える。冷暖房が完備されている。他の行員の執務室よりも良く、極めて快適かつ開放的な環境である」との主張が認められた。
高裁判決後の記者会見で、原告代理人の伊藤安奈弁護士は「一審ではそれ以外にも銀行側の主張や、証言が全面的に採用されてしまった」と振り返った。
「Aさんは職務怠慢や業務に対して、きちんと物を申すタイプです。それゆえに多少強めに主張することもありましたが、地裁はそうした事象を過大に評価し、客観的な証拠や裏付けなどがないにもかかわらず、あたかもAさんが攻撃性のある人物かのように認定してしまいました」(伊藤弁護士)
これに対し控訴審の東京高裁は、東京都労働委員会および東京都労働局が職場環境について「異様なもの」「法違反」と認定していたこともあり、「長期間にわたる隔離配置は業務上の合理的理由が認められず、精神的な苦痛を与えることになる」と指摘。パワーハラスメントに該当すると判断した。
また、懲戒処分の理由とされた10項目についても、高裁は一部の根拠が不十分であると判断。該当する項目についての懲戒処分が無効であり、さらに不適切な降格処分が「人事権の濫用」に該当すると述べた。
「高裁のほうが客観的な証拠や主張の重みを考慮して判断してくれたという認識です」(伊藤弁護士)
「報復」の立証は極めて困難
伊藤弁護士は、高裁判決をおおむね評価しつつも、次のようにコメントした。
「内部通報からわずか1か月後に懲戒手続きが開始された経緯を踏まえると、代理人としては、報復目的であった疑念は払拭(ふっしょく)できません。しかし高裁判決でも『報復という関係性は認められない』と判断されました」
伊藤弁護士は続けて、労働者側が「報復意図」を立証することの困難さに言及。
「(昨年の)公益通報者保護法の改正により、内部通報後の不利益取り扱いは通報後1年以内であれば原則『報復』と推定されるようになり、企業側が『報復にあたらないこと』の立証責任を負うことになりました。
本件がもし、法改正後の事案であれば『報復』が認定されていたと思います。
今回、裁判を労働者側で戦ってみて、内部通報に対する立証が極めて困難だと感じたところですので、立証義務の転換は法改正の良かった点だと思いますし、今後、裁判所もこうした法の趣旨を踏まえた適切な判断をしていってほしいです」と述べた。
「地裁判決後は絶望、今はほっとしている」
Aさんは会見で「地裁の判決では絶望的だったが、高裁でおおむね認められほっとしている」と述べる一方、「判決が出て終わりではなく、銀行として本質的に向き合うべき問題は多くある」と指摘。
「わたしのおかれていた職場環境については、労働組合からも是正要請が行われるなど、当然、社内・社外の役員、執行役員も知っていたはずです。
それなのに、なぜ、3年3か月もこのような状態が続いたのか、疑問が残ります。
あおぞら銀行は旧日本債券信用銀行から続く、歴史のある銀行ですので、自ら第三者委員会を設置するなど、今後もきちんと対応をしてほしいです」
なお、あおぞら銀行は弁護士JPニュース編集部の取材に対し「判決文が届いておらず、コメントは差し控える」と回答した。

