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「規則ですので、ご家族でも下ろせません」〈資産4,500万円〉82歳父が認知症に…銀行窓口で告げられた「口座凍結」の無慈悲な現実【FPが解説】

「規則ですので、ご家族でも下ろせません」〈資産4,500万円〉82歳父が認知症に…銀行窓口で告げられた「口座凍結」の無慈悲な現実【FPが解説】

病室での叫びと、銀行窓口での現実

退院後は施設への入居が必要となり、入居一時金と当面の費用で約500万円が必要でした。健二さんは父の書斎から通帳とキャッシュカードを探し出しましたが、肝心の暗証番号がわかりません。慌てて病院へ走り、ベッドの父に問いかけました。

「父さん、施設に入るお金が必要なんだ。銀行の暗証番号、教えてくれ!」

しかし、昭三さんは虚空を見つめ、「番号……? バスはまだ来ないのか……」と繰り返すばかり。「父さん、頼むよ! 暗証番号は!?」健二さんの必死の叫びも届かず、会話は成立しませんでした。

万策尽きた健二さんは、通帳と届出印を持って銀行の窓口へ向かいます。「事情を話せば、家族だしなんとかなるだろう」という一縷の望みを抱いてのことでした。

しかし、窓口での対応はドライなものでした。

「暗証番号はわからないんです。でも、父は入院中でここには来られません。息子である私が通帳も印鑑も持ってきているんですよ」

「申し訳ございません。お引き出しには、ご本人様の意思確認、または暗証番号の照合が必要です。規則ですので、ご本人様と面談できない場合はお取り扱いできません」

食い下がる健二さんは、焦りのあまり、いってはいけない事実を告げてしまいます。

「面談なんて無理です! 父は認知症でもう私のことすらわからない状態なんですよ!」

その言葉を聞いた行員の表情が変わりました。

「……左様でございましたか。ご事情はお察ししますが、ご本人様に意思能力がないとなると、銀行としてはご預金を保護する義務がございます。成年後見人などの公的な代理人を立てていただかない限り、どなたであっても払い出しには応じられません」

厳密には「即座に凍結」というわけではありませんが、暗証番号を知らず、本人確認もできない健二さんにとって、その口座は事実上「凍結」されたも同然でした。 4,500万円もの資産がありながら、それを介護に使えない。健二さんは自身の貯蓄を取り崩し、足りない分は教育ローンを抱える自身の家計をさらに切り詰めて、父の施設費用を立て替える羽目になったのです。

なぜ「家族」でも引き出せないのか?【FPが解説】

なぜ、このような事態に陥ってしまったのでしょうか。法的な観点からいえば、銀行の対応は正当であり、むしろ顧客の財産を守るための措置です。預金契約はあくまで「銀行」と「本人」との契約だからです。

実は、2021年に全国銀行協会から「認知症の方の預金引き出しに関する指針」が出され、医療費や介護費など「本人の利益」が明らかな場合に限り、例外的に親族による引き出しを柔軟に認める動きは広まっています。

「それなら安心だ」と思われるかもしれません。しかし、現場の実態はそう甘くはありません。

この対応はあくまで「特例」であり、権利ではありません。実務上は以下のような厳しいハードルが課されることが一般的です。
 

1.    使途の厳格な証明: 請求書などを提示し、窓口から病院や施設へ「直接振り込み」に限られることが多い(自由な現金引き出しは不可)。 2.    相続人全員の同意: 「将来の相続トラブル」を避けるため、銀行から「推定相続人全員(今回の場合は健二さんの兄弟など)の同意書と印鑑証明書」を求められるケースがある。 3.    高額出金の制限: 数百万円単位の入居一時金など、資産が大きく動く場合は「保全の必要性」から、やはり成年後見制度の利用を促される可能性が高い。

つまり、「窓口で頼み込めばなんとかなる」ものではなく、毎回膨大な書類と審査が必要になるのです。結局、健二さんのように「事実上の凍結状態」に陥り、後見人を選任せざるを得ないケースがあとを絶ちません。

後見人がつけば、資産は裁判所の監督下で厳格に管理され、家族のために自由にお金を使うことは難しくなります。また、専門家が後見人になれば月々の報酬も発生し続けます。

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