
たいみち
小さい紙を眺めていたら
先日、自分の小さい紙関係のコレクションを整理する機会があった。「小さい紙関係のコレクション」とは、ラベル、値札、封緘紙、アルバムに写真を貼るときのフォトコーナー、それにインデックスラベルなどである。どれも箱や中身が可愛らしかったり洒落ていたりで、骨董市で見つけるたびに一つ二つと買い集め、それなりに集まっている。当時のデザインに加えて道具としても今後失われていくもの達なので、何らかの形でどこかで紹介したいと思っているがなかなか難しい。
そんな中、インデックスラベルの以前の名称が「口取紙」であることがふと気になった。口取紙という名称は知っていたが、どういう意味なのか調べたことはなかった。
そうだ。「口取紙」という名称の由来と、持っているインデックスラベルの写真だけでも紹介しよう。ちょっと短くなるかもしれないが、まぁいいだろう。

いつからあるのか
さて、「口取紙」の由来は何なのか、、、いや待て。それだと本当に2、3行で終わってしまいそうだ。それではあんまりなので、一応歴史から調べてみよう。まず日本発祥ではないだろう。今回アメリカのカタログを見てみたら「INDEXING」というワードが使われていたので、それで調べてみた。するとAIがまとめてくれた内容は以下であった。(「Indexing history」で検索して日本語に翻訳)
◇ ◇
■インデックスの歴史
アレクサンドリアの古代パピルスタグから中世のコンコーダンスまで、印刷機とともに主題索引へと進化し、後に検索エンジンによってデジタル化されましたが、常に情報を容易にアクセスできるように整理する役割を果たし、手動リストから概念と場所をマッピングする複雑なアルゴリズムに移行しました。(中略)
*古代ローマ/ギリシャ
「インデックス」(ラテン語で「示す」) という用語は、最初はパピルスの巻物に付けられた小さなタグを指し、タイトル、メモ、または内容を識別し、巻物を見つけるのに役立ちます。(後略)
◇ ◇
なんと!古代ローマのパピルスまで遡ってしまった。つまりインデックスラベルは情報整理あたりの歴史の中で語られるものなのか。調べると面白そうだが、自分の興味の範囲としては現物が手に入りそうな時代の文房具、大体1800年代後半以降なので、古代ローマの話は触れずにおこうと思う。なお、インターネット上には、古代ローマのインデックスラベルや説明らしき画像もあったので、興味のある方は調べてみることをお勧めする。
紀元前の古代ローマから2000年ほど時代を飛ばして、日本に入ってきたのはいつなのかから調べることにした。日本発祥で無いものは、大体明治初期に海外から輸入されている。インデックスラベルは小さいものなので、インデックスラベルのみの情報は見つけにくいと思い、関連するものから辿ってみることにした。
インデックスラベルの使用シーンや関連する文具事務用品は何か。名称もおそらく最初から「口取紙」ではないだろう。
思いつくところとして使われたのは「帳簿」であり、名称は「見出紙」だろう。改めてインデックスラベルの箱を見ると、口取紙ではなく、「帳簿」「見出紙」の文字が見つかった。
*商品名が「見出紙」のインデックスラベル。時代不明(推定戦前)
帳簿で使われたということは、明治初期に複式帳簿が入ってきたときに一緒にインデックスラベルも入ってきたのではないか。そこで明治初期に銀行業務を立ち上げるためにイギリスから呼ばれたお雇い外国人のアラン・シャンドの「銀行簿記精法」、同時期の福沢諭吉の「帳合之法」、この2つの書籍について「見出紙」や「口取紙」という言葉があるか調べてみた。
シャンドの「銀行簿記精法」には「見出を付けたるものなり」という表記があり、もしやと思ったがよく読むと見出し紙をつけるという意味ではなかった。また、福沢諭吉の「帳合之法」にも該当するような表記は見当たらない。
そこで、国会図書館デジタルコレクションでざっくり検索すると、明治21年以降、役所や警察など公共機関や銀行などの帳簿のつけ方マニュアルのような資料に「見出紙を付し」「見出紙を貼付し」といった表記や見出紙を貼り付けた図が掲載されていることが分かった。おそらく公共機関・金融機関の帳簿のつけ方マニュアルのベースとなる資料があり、それに倣って広がったのであろう。
*『福井県現行諸令達』第1冊,福井県,明25-26. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/788707 (参照 2026-01-19)
そして「口取紙」はというと、こちらも明治22年の福島県の会計処理マニュアルに「帳簿は各項目に口取紙を付し」という表現が出てくるが、他の公共機関・金融機関で「口取紙」の表記は見当たらない。「口取紙」の表記は、昭和に入ってから目立つようになっている。
