アメリカと日本のインデックスラベル
明治20年代以降、帳簿のマニュアルに「インデックスラベルを付けよ」といった説明があったことはわかったが、肝心のインデックスラベル自体はどこから来たのか。帳簿の付属品として一緒に輸入されたことを推測したが、その気配はない。それというのも、日本は最初から紙製のインデックスラベルが使われていたようだが、アメリカではインデックスラベルは紙製ではなかったようなのだ。
小さいものだからか、汎用的なものだからかアメリカでもインデックスラベルについて複数の名称があり、カタログには「Indexing」「Index tag」「Index tab」などの言葉が出てくるし、日本のカタログでは「Indicator」という言葉を当てていることもある。名称が定まらないと情報を見つけづらく、見つかったものをベースとした説明になるが、具体的な形態は1900年頃のカタログでは金属のプレートに紙を差し込んで、それをクリップのように紙にとめるものが主流であったとみられる。
金属以外の素材もあるが、革やセルロイドと布などで、全体が紙製のものは見当たらない。また、インデックスとなるものを取り付けるのではなく、あらかじめ用紙の一部を切り抜いたようにインデックスと紙が一体化しているタイプもある。
*1902年アメリカ文具卸商のカタログ
では日本のスタンダードなインデックスラベルはどこから来たのか。
明治20年代の資料を見ると、白い紙を貼り付けていたように見える。明治44年の台帳のようなものの広告でも、白い紙が貼られている図が描かれており、自分のコレクションの大正時代の帳簿にも手作りのインデックスラベルが付いているものがあった。スタンダートであったのかはわからないが、紹介しておく。
*「加除自在町村事務期日表」広告、明治44年

*大正4~5年頃の帳簿。比較的厚手の和紙を長方形に切って貼り付けている。インデックスラベルに書かれているのは屋号と思われる。
二つ折りにして紙を挟んで貼るインデックスラベルは、大正4年の伊東屋のカタログに、掲載されているのを見つけた。
*伊東屋カタログ(大正4年)
この時点で、赤枠と青枠があり、形も今と変わらない。ちなみに明治43年の伊東屋のカタログでは見当たらないので、この「紙製二つ折り貼り付けタイプのインデックスラベル」が登場したのは、明治の終わりから大正初期であろう。
なお、この時期に帳簿を扱っていた大手文具店である銀座文祥堂の大正9年のカタログにも、同様の商品が掲載されていた。
*文祥堂、記帳用品目録、大正7年
伊東屋、文祥堂それぞれのカタログに掲載されているラベルは大変よく似ているので、同じメーカーが作ったものかもしれない。メーカーは不明で、特許データベースでも、該当するような特許は見つけられなかった。ただ、輸入品をもとにしたのではなく、日本独自のものであることは間違いであろう。つまり、今でも定番のインデックスラベルは、110年ほど前に日本で生み出された超ロングセラー商品なのだ。
口取紙・見出紙
さて、3行で終わってしまいそうなところを寄り道したら、意外と長くなってしまった。調べると色々出てきたので、つい楽しくなってしまったのだ。そろそろ「口取紙」という名称について調べた結果を紹介しよう。
最初「口取紙」で検索したところ、AIは「お菓子の詰め合わせで、お菓子同士がくっつかないようにする仕切り紙」「“一口取る”という意味から分ける、区別すること」といった結果が出て来て、「要するに区切って分けるということが、なるほど」と思った。さらに調べると、料理・食品にまつわる意味合いもないわけではなさそうだが、それだけではないようだ。
前出のアラン・シャンドの「銀行簿記精法」には「口取勘定」という言葉が何回か出てくる。意味を調べるとAIは以下の回答だった。
◇ ◇
「口取勘定(くちとりかんじょう)」とは、江戸時代の商習慣において、売買の仲介者(口入屋や仲買人)に対して支払う「手数料」や「口銭(こうせん)」のことを指します。
主な特徴は以下の通りです。
• 意味: 商品の売買が成立した際に、仲介をした者へ報酬として支払われる金銭のことです。
• 由来: 「口取(くちとり)」には、馬の口を引く(先導する)という意味のほかに、物事の仲立ちをするという意味がありました。
• 現代での呼称: 現在の「仲介手数料」や「コミッション」に相当します。
◇ ◇
江戸時代に使われた言葉という意味では時代感は一致するが、今一つ信頼性に欠ける気がした。ただ「銀行簿記精法」に「口取勘定とは」という説明を見つけられないので、明治初期の時点で会計関係において日常的に使われていた用語なのかな、とは思った。
読解に苦戦しながらも、銀行簿記精法の「口取勘定」の記載個所を読んでいくと、取引先の口座といった意味で使われているように読める。確かに銀行の帳簿作成マニュアルを見ると、見出紙のつけ方として取引口座毎などの記載もあり、あながち間違いではない気がしてきた。
つまり、会計関係で使用されていた「口取」の意味は今一つ明確ではないにしろ、「口取紙」の語源はこの「口取」という言葉からきている可能性がある。

*商品名が口取紙のインデックスラベル。時代不明(推定戦前頃)
なお、「見出紙」「口取紙」の他に、「ヒビロ」という名称が出てきた。特許データベースと国会図書館それぞれで数件見かけたが、これについてはカタカナ以外の表記や語源について情報が探せなかった。
