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私服で店内を巡回し、万引き犯を取り締まる「万引きGメン」。万引き対策の頼もしい味方として、重宝する店は少なくない。そんな万引きGメンのベテランの1人が、伊東ゆうさん。これまで6千人以上の万引き犯を挙げ、警察関係者からも一目置かれる存在だ。

◆倫理観が欠落している犯行動機
——組織的な犯罪などは別として、万引き犯の大半は、困窮してやむにやまれずというパターンが多数派なのでしょうか?伊東:いえ、そんなことないです。むしろ少なくて、割合としては20人に1人ぐらいではないでしょうか。金持ちでも万引きをする人はいますし……。貧困が動機になるとは限らないのです。
一番多いのは、「ふつうに暮らしていけるけど、もっと贅沢したい」という気持ちが抑えられない人たち。彼らの心の中は、「どうせやるなら、いい商品を盗りたい。どうせ盗るなら少しでも多く盗ってしまおう。この前はバレずにうまくいったから、今日もやっちゃおう」という、倫理観のかけらもないものです。
罪の意識はなくて、万引きを「節約」あるいは転売して「お金を稼ぐ手段」と考えているから、捕まえても「このくらいのことで警察呼ぶんですか」とか平然と言ってきます。あと「社会が悪い」と言い出して、なぜか人生相談になることもあります。こういう人を見ると、日本社会の将来はどうなるのだろうと暗い気分になりますね。
◆35年間も内部犯行を続けた“ベテラン店員”
——聞いた話によると店の従業員による内部犯行もあるそうですが、どちらかといえばレアケースなのでしょうか?伊東:実は結構あります。先日も1人挙げました。今年入社して、まだ数か月しか勤務していない社員ですが、商品を店の裏からこっそり持ち出そうとしているのを捕まえました。内部のスタッフのほうが盗みやすい面もあり、手口はさまざまです。
典型的なのは、売り場に出ているときに、さりげなく商品を持って事務室に隠し、帰るときにカバンに入れて出るやり方です。他にも、自分で買うふりをして精算しない、配送業務時に自分宛に購入数より多く送るなど、単純なやり口が多いですね。
最近は、隙間時間にアルバイトできるサービスが普及して、店側も人手不足を補うために活用しています。そうしてやってくるアルバイトの人には、店の商品を盗む悪い者も紛れ込んでいることがあるんです。内部犯行は、店長が怪しいと感じて、私にマークするよう依頼することもありますが、万引き犯を捕まえたら、実はそこの社員だったということもありました。
——特に印象に残っているエピソードを教えてください。
伊東:記憶に強く残っているのは、開店から35年間ずっと勤務してきた生鮮部の女性。数千円相当の食品を盗ったところを捕まえたら、「私、従業員なんです」と言ってきました。追及すると「雇われた時から、毎日やっていました」と言って泣き始めたんです。それを聞いた店長は「35年も一緒にやってきたのに……」と、怒るというよりかうろたえていましたね。
もちろん女性は、その場で解雇になりましたが、店長は「次の日から仕事が回らない」と頭を抱えていました。内部犯行は、多くの店が抱えている大きい問題だと思いますね。

