【日本庭園 超・入門】なぜ日本庭園には“飛び石”があるのか? 茶の湯が育んだ「露地」の美学

【日本庭園 超・入門】なぜ日本庭園には“飛び石”があるのか? 茶の湯が育んだ「露地」の美学

蹲踞(つくばい)

蹲踞は、茶事の前に手と口を清める儀礼のための手水鉢(ちょうずばち)とその周囲を囲う石組で構成されます。寺院の参道や堂前に同様の用途の手水鉢があったところから、利休が着想したもので、露地には不可欠な要素です。蹲踞の呼称は、「踞(つくば)う」という身を低くかがめる所作からきていますが、これは、謙虚をもって心身を清めることを象徴する所作でもあります。後世には、本来の機能や精神性を離れ、美的な要素として評価されて、茶庭以外にも、装飾的に、和風の庭の雰囲気を演出する庭の景物として設置されるようになります。

臥龍山荘(大洲市)の蹲踞と石灯籠
臥龍山荘(大洲市)の蹲踞と石灯籠。茶道においては、茶室に入る前に、手水鉢手前の前石の上につくばって、手や口を清めるための施設。

これら三つの景物は、茶事と一体となった露地において、それぞれの機能と精神的な象徴性を持った中心的な存在で、設置場所や型の選択などには細やかな決まり事が存在します。しかしながら、これまでの歴史の中で、典型的な日本庭園のイメージを象徴的に示す記号・アイコン的な存在として国内外に普及し、露地の約束事を離れた場所にも広く使われるようになっているのは興味深いところです。

侘び寂びの美の空間

京都・桂離宮
京都・桂離宮の一角。園路を構成する延段(のべだん)の中央に見えるシュロ縄が結ばれた石は「関守石」。この石が置かれていたら、この先は通行禁止のサイン。

私たちに日本庭園らしさを感じさせる象徴的な景物の多くが、露地に由来するのだとすれば、実際にその場所を訪れてみたくなるのではないでしょうか。茶事に付随する庭園であるがゆえ、露地にはどこか閉ざされた印象があります。しかし、伝統的な寺院や旧家、あるいは大名庭園の一角には、茶室とともに茶庭が整えられ、公開されている場所も少なくありません。

関守石
京都・ 妙心寺に見る関守石。

さらに、たとえ「茶庭」と明確に位置づけられていなくとも、多くの日本庭園には露地の美意識が取り込まれています。日本文化の中心的な要素ともいえる侘び寂びの精神や美学を庭園空間の中で体感できるのは、何よりの魅力です。心の静けさにそっと触れような、非日常のひとときを過ごせることでしょう。

【参考図書】

図説・茶庭のしくみ: 歴史と構造の基礎知識、尼崎博正、淡交社(2002年)

和の庭図案集、建築資料研究社(2011年)

Credit 文&写真(クレジット記載以外) / 遠藤浩子 - フランス在住/庭園文化研究家 -

えんどう・ひろこ/東京出身。慶應義塾大学卒業後、エコール・デュ・ルーヴルで美術史を学ぶ。長年の美術展プロデュース業の後、庭園の世界に魅せられてヴェルサイユ国立高等造園学校及びパリ第一大学歴史文化財庭園修士コースを修了。美と歴史、そして自然豊かなビオ大国フランスから、ガーデン案内&ガーデニング事情をお届けします。田舎で計画中のナチュラリスティック・ガーデン便りもそのうちに。

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