銀行員「今回の融資は見送らせていただきます」…確定申告で節税をやりすぎた45歳社長が〈社会的信用を失った〉ワケ

銀行員「今回の融資は見送らせていただきます」…確定申告で節税をやりすぎた45歳社長が〈社会的信用を失った〉ワケ

2月の確定申告に向けて、1年間の帳簿を整理している人も多いでしょう。この時期になると、「思ったより利益が出てしまった、なにか買って経費にしよう」といった悩みも増えてくるころです。しかし、企業財務の視点からいえば、その判断は危険です。本記事では、山根社長(仮名)の事例とともに、経営者が陥りやすい“節税の罠”について、資産形成・経営アドバイザーの萩原峻大氏が解説します。※本記事で紹介する事例は、実際にあった出来事を基にしていますが、個別事案が特定されないようプライバシーに配慮し、登場人物や具体的な状況に一部変更を加えて再構成したものです。

毎年恒例“節税自慢ショー”の終焉

確定申告シーズンを迎えた、ある冬の夕方のこと。繁忙期で慌ただしい税理士事務所の面談室に、勢いよく入ってくる男性がいました。

「先生っ! 今年も“完璧に節税”してきましたよ!」

声の主は山根社長(仮名/45歳)。毎年この時期になると現れる、“節税に取りつかれた男”です。

両手には、分厚い領収書ファイル。中には ぎっしりホチキス留めされた領収書の束がぎっしりと詰まっています。

— 飲食代

— ガソリン

— スマホ

— 文具

— なんとなく買ったモバイルバッテリー

— 内容があいまいな業務委託料

社長にとって節税は、もはや「会社を守る手段」ではなく、“趣味” と化していました。税理士の前に座ると、すでに胸を張っています。

「これ全部、経費になりますよね? みてくださいこの量!」「今年は特に気合を入れて集めましたから」

毎年恒例の“節税自慢ショー”が幕を開けようとした―― そのときでした。“経費の一覧ページ”を開いたところで、税理士の手がピタリと止まったのです。

山根社長は、まだニヤニヤしています。「どうです先生? 今年も“節税の達人”って呼んじゃってくださいよ〜」

しかし、税理士は笑っていませんでした。「……山根社長。これ……見えますか?」「え、どれです?」「本来なら、もっと数字が残るはずの欄です。」

税理士が指差したのは、帳簿の一番最後。社長は思わず覗き込みます。

「……あれ? こんな数字でしたっけ?」

少し間を置いて、税理士は告げました。「はい。今年は――思っていたより、桁がひとつ少ない数字になっています」

その一言で、社長の笑顔がすっと消えました。長年続いた“節税自慢ショー”が、静かに終わった瞬間でした。

節税は成功したはずが…

税理士は、前年と今年の帳簿を並べて提示しました。指差しているのは“期末時点の現金残高”の欄です。

昨年は、2,400万円。 決して余裕があるとはいえませんが、“次の一手”を打てるだけの金額でした。 しかし今年は550万円。

「……あれ?」社長の喉が、小さく鳴りました。「……こんなに、使った覚えはないんですが」

「節税は、確かにできています」税理士は淡々と続けます。「ですがその代わりに、会社の“体力”がほぼ削り切られています。今期の経営に必要な現金は足りますか?」

節税は成功しているのに、動かせる現金がない。その違和感が、はっきりと形を持って社長に突き刺さりました。

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