清々しい気持ちで迎える新年。新しい年の機運を高めるのに相応しいのは、一流の料理だ。
透明感のある刺身、淡麗な出汁のおでん、薬膳の効能高き火鍋……。心身に染みわたりしみじみ旨い、上質なものだけを口にしたい。
一年の計は美食にあり。美食はじめが素晴らしいものであるほど、充実した日々が待っている。
今回は、鮨、日本食、ステーキ編!
端正なカウンターで、親方が織りなす握りとつまみの粋を味わう
いまの江戸前鮨店は清潔感ある白木のカウンターで客を出迎えるところがほとんど。
心地良い緊張感の中、2026年初の外食を楽しめば運気も上がるに違いない。
まずは、『鮨 将司』を紹介。
シャリは、同じコシヒカリでも産地によって変わる粘度を考えて2種をブレンドするなど、徹底してこだわる。「やま幸」から仕入れた「中トロ」との抜群の一体感に唸る
凛とした店内は正月に相応しく、背筋も伸びる。握りも美しく、マグロは赤身、中トロ、大トロと3貫続くが、どれも一体感が見事で旨みや酸味、甘みがひとつになって口の中に広がっていく。鼻に抜ける香りまで愛おしい、そんな鮨である。
店主・山口さんは表参道『鮨 ます田』増田 励さんに師事。2020年独立、2025年1月に現在地へ移転
店主の山口将司さんは余韻が膨らむネタへの手当てを己の仕事と心得る。
タネをまずプレゼンし、好みを確認していく。この日は千葉・銚子のキンメダイ昆布締めや鹿児島・出水のスミイカなど
魚本来の持ち味を活かしつつ握ることで完成度が高まる、そんな美味しさを志す。
シャリははらりとほぐれる粒立ちの良さと、コクはあるがキレも感じる味わいを目指して米や酢をブレンド。
手当ても伝統的な仕事に加え、最善を模索し、例えば塩を強めにきかせた昆布水にサクを漬け込み、味を入れる手法を独自に考案。いまはカワハギで実践している。
唯一無二の味わいでファンも多い「カワハギ」
「カワハギは1貫分を切り付けた後、さらに軽くヅケにしてサッとゆがいた肝と握ります」と山口さん。
つまみの定番「マグロのすき焼き」。大トロの香りと旨み、タレの甘辛さ、茨城・奥久慈の卵黄のコクが渾然一体となる。最後はシャリを絡めて。料理はすべておまかせ(¥38,500)より
この美味しさはいくつもの繊細な仕事の積み重ね。その姿勢にも、心が正される。
年始にふさわしいネタは何か尋ねると「やはり車エビ」と山口さん。エビは脱皮を繰り返す習性から成長や発展の象徴として尊ばれてきた。
「お祝い膳などには必ず入っているし、慶事には車エビと教わってきた」そうで、もちろんこの店でも注文の相談は可能だ。
2.和食の真髄は手仕事にあり。魂を揺さぶる食材の競演
『日本料理 佐々』
夜になると石灯籠も美しく灯る坪庭を従えたアプローチは床に大谷石を敷き詰めた高貴なつくり。宴が始まる期待に、気分も高揚する
正月は、日本人が古来より大切に守ってきた文化を、いま一度静かに再認識する期間ともいえる。
ならば、伝統を重んじる日本料理と向き合うのもひとつの手だろう。
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坪庭を愛でながら席に着く。この動線がすでに新年らしい格別な設えに思える。『日本料理 佐々』は鮨や和食の名店で研鑽を積んだ佐々悠樹さんが腕を振るう一軒。
中国・上海から帰国して広尾で独立という異色の経歴を持つからこそ、日本料理に対する思い入れは人一倍。
伝統を重んじつつ美味しい理由を突き詰めて考え、己が信ずる道を歩んでいる。
正月らしい白味噌仕立てで提供される「胡麻豆腐 ほぼ松葉蟹」。カニは真薯にして、車エビのすり身だけでつなぐ贅沢な仕様だ。仕立てる直前に成形する、これも作りたて
それを象徴するのが「胡麻豆腐」。2024年の開店以来、仕立ては変えながらもゴマを煎るところから毎日作っている。
秋田産熊バラ肉が届いたこの日は、鍋に仕立てて。切りたてにこだわり提供する
ほかにも、信頼する業者から最高の熊肉が入ったら提供する直前に塊から薄く切り出す。
必要最小限の味付けで出汁も上品な「ツキノワグマと天然なめこの小鍋」。ほのかな甘みが澄み渡り滋味深い。
〆ご飯はササニシキ系とコシヒカリ系の2種。炊きたてが食べ比べられるよう、時間差で提供
〆の白飯は蒸らしにベストな時間を見つけ毎回厳密に計る。
“漬けたて”の赤身のほか、ご飯のお供もいろいろ。料理はすべて正月のおまかせ(¥35,200~)の一例
つまりは作りたて、切りたて、炊きたてで、すべての料理で瞬間を大切にしてきた。理由を尋ねると「その方が断然美味しいから」と事もなげに答える佐々さん。
手間を惜しまぬ瞬間の料理が味わえるとはこの上ない贅沢。忘れ得ぬ年始の宴になる。
『日本料理 佐々』のある広尾から軽い運動にちょうどいい徒歩圏内に位置する西麻布は『アダムアンドイブ』や『テルマー湯 西麻布』といった深夜も入れる有名サウナがあるエリア。
ほかにも個室利用できるプライベートサウナも点在しており、美食ついでにサ活はじめもできる。
3.ステーキの王者のDNAに知る人ぞ知る隠れ家で出合う
『Steak Dining Vitis』
英気を養ってくれる食材、赤身肉。
肉を熟知した目利きの達人が選ぶ極上の赤身肉を、絶妙な火入れで焼き上げた『Steak Dining Vitis』のステーキは、凛とした一年のスタートにぴったりだ。
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正月太りを解消しつつ、新年に相応しい贅沢な味をというときは、赤身肉のステーキがいい。
その理由はコラムを読んでいただくとして、極上のステーキを費用対効果高く求めるなら『Steak Dining Vitis』一択。
オーナーシェフの結城壮平さんは、ステーキの名門『麤皮』や『哥利歐』で研鑽を積んだ肉の達人。
自ら産地に赴き納得した黒毛和牛を仕入れ、修業先と同じ炉窯で焼き上げる。
料理の前に、まずは肉のデモンストレーション。左から味の濃いウチモモ、脂と赤身の調和がとれたイチボ、肉質の柔らかいランプ。すべてのざき牛。3人なら全種類食べ比べ可能
鹿児島ののざき牛がお気に入りで「赤身にしっかりとした旨みがあり、上品な脂質とジューシーさが魅力」と結城さん。
「黒毛和牛炉窯焼ステーキの2部位食べ比べ」。右からのざき牛のイチボと、ウチモモ。添えられた赤ワイン塩やグリーンペッパー入り粒マスタードなどで味変も
コースでは、3種の部位から好みの2種を選んで食べ比べできるのも愉しみ。
肉質の良さは言わずもがなで美味の要は炉窯。炭火の力で表面を素早くカリッと焼き上げ、炉窯ならではの四方からあたる輻射熱で肉汁を閉じこめる。焼き時間も温度も結城さんの体内センサーで。
「黒毛和牛のタルタル キャビア添え」のキャビアは完全無添加のN25。ともに¥19,000のコースより
経験に培われた技と勘が繊細にして力強い肉の旨みを引き出す。これが新たな1年を始める活力になる。
赤身肉は肉の旨みをストレートに味わえるだけでなくとてもヘルシー。カロリーはリブロースに比べて約半分と少ない上、脂肪をエネルギーに代謝するL-カルニチンも豊富で痩せる効果もあるとか。
鉄分やビタミンB群、蛋白質も多く含み疲労回復にも一役買ってくれる。
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