◆FIREを数式で考えたら「時間」が一番大事だった
しかし、そんな忖度不要、天下御免の立場ではないなかで、個人の自由な意思を突き通すには経済的な自由が必要です。それを私はZ=a(X−Y)+bという数式で整理しています。Zは「資産」、Xは「収入」、Yは「支出」。aは「時間」でbは「貯蓄」としています。多くの人が経済的な自由にはbの貯蓄を重視しますが、私が考える最も大事なのは、「a(時間)」とそれに乗じる「X−Y(収入−支出)がプラスであること」です。そしてXの収入は、自分の時間を切り売りする「労働による収入」と、利息や配当、不動産を所有することでもらう家賃のような「非労働の収入」に分けられますが、真の経済的な自由とは、自分の時間を切り売りしない「非労働の収入」だけでリタイア後の支出を超えられている状態だと捉えています。これこそがFIREの必須の条件である経済的な自由を手に入れた状態です。
そもそも「会社を辞めたいからFIREしたい」と考えるならば、まず経済的自由を目指すよりもっといい方法があります。
「朝決められた時間に起きなくてよい」「痛勤電車に乗らなくてよい」「嫌な上司に会う必要がない」など、勤め人としての苦痛から逃れたいのであれば、そうではない会社に転職すれば解決する問題なのです。わざわざ経済的な自由を手に入れるまで我慢して嫌な環境に縛られるよりも、よっぽど楽で早い解決策ではないでしょうか?
◆「FIREしたのに忙しい」それでいいじゃないか
よく周囲から私は「FIREしても、なんでずっと楽しそうに過ごせてるの?」と聞かれます。しかし当の私自身としては、周囲が「FIREしている」と言うから「自分はFIREしているんだ」と受け入れているだけで、実はFIREなんて「なにそれ?」程度の感覚です。私はやりたいことしかやっていませんから、楽しそうなのは当然でしょう。経済的な自由を手に入れていますから、無償でもやりたければやるし、億単位のお金を眼の前に積まれても、やりたくないことはやらないで済みます。こんな日々が楽しいのは当たりまえです。
一方でいくつかの会社のお手伝いをしたり、多くの管理組合で役員になっているので、毎日あちこちに出かけています。むしろ、勤め人時代よりも慌ただしく過ごしているので、人によっては「早期リタイアしてないのでは?」とツッコミたくなるはず。でも、その通りです。私は「嫌なことから早期リタイア」しただけで、人生から早期リタイアしたわけではないのですから。もし勤め人でいるのが嫌ではないなら、敢えて辞める必要はないでしょう。
FIREとはあくまでも幸せに暮らすための一つの概念でしかありません。FIREに踊らされて「貯金1億円を作って、会社に辞表を叩きつけてやる!」となる前に。どうか「自身のやりたいこと、やりたくないことはなんだろう?」と考えてみて欲しいのです。「やりたいこと・やりたくないこと」を実現するために、お金がどうしても必要ならもちろん経済的な自由を手に入れる必要がありますが、一方でお金が必要ではないなら、わざわざ経済的な自由を目指す必要すらないのです。
「何から早期リタイアしたいのか?」「何をしていたら楽しいのか?」にフォーカスをしてFIREを考えれば、自分なりの幸せが手に入るのではないでしょうか。
<構成/まてい社>
【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち19区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『戦わずして勝つ 不動産投資30の鉄則』(扶桑社)、『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)

