「どの鍋が一番好きですか?」と聞かれたら、まず頭に思い浮かぶのが、猪鍋だ。『KOMB』では、12月の定番鍋として出している。

冬が近づくと、お客様からも「もうすぐ、猪が食べられるの?」と声が挙がるほどの人気メニュー。
使っているのは、石川県・珠洲(すず)市で獲れたもの。そのなかでも、臭みが一切なく、脂がすっと溶ける個体だけを選び、送ってもらっている。産地直送の獲れたてだ。
このスペシャルな猪との出合いは、『KOMB』がオープンする数か月前に、珠洲市に干し子(ナマコの卵巣の珍味)を探しに訪れたことがきっかけだった。
その折、あるジビエの解体場に初めて足を踏み入れた。猪の猟から解体、精肉、販売までを一貫して行うその場所では、ひとつひとつの工程を、衛生面に細心の注意を払いながら丁寧に作業が進められていた。
処理された個体は適切に熟成された後、部位ごとに切り分けられていく。
猪の良し悪しは、見た目だけでは判断できないそうだ。なんと、一体ずつ実際に味見をして、ランクを決めているという。
さらに難しいのが、育った環境が良ければ必ずおいしい、というわけでもない。その時のホルモンバランスや、体調によっても味は大きく変わるそうだ。そもそも、病気をしていれば、食べることすらできない。衝撃的だった。
現地を訪れて初めて、その事実を実感した。食材を知ること、現場を見ることの大切さを、強く感じた体験だった。
珠洲市は、海と山の距離が近く、山の実りも豊富で、猪にとって申し分のない環境だ。冬になると気温がぐっと下がり、脂の甘みと口溶けの良さが、さらに際立つ。
猪のいちばんの魅力は、やはり脂だ。実は豚肉よりもくどさや臭みがない。舌の上ですっとほどける甘みと旨みが軽やかで最高なのだ。
そこに、冬野菜のねぎや人参、大根などが加わると、味わいがきれいにまとまる鍋になる。

今回は、猪みそ鍋のレシピを紹介しよう。
おいしい猪が手に入ったら、作ってみてほしいレシピ。もし猪が手に入らない場合は、もちろん豚でもおいしいので、ぜひ。
recipe
猪みそ鍋
材料(2人前)
・猪しゃぶ肉…300g
・出汁(鰹昆布)…1.5L
・白みそ…100g
・信州みそ…30g
・酒…50cc
・みりん…30cc
・薄口醤油…適量
・にんにくスライス…1枚
・一味…ひとつまみ
・九条ねぎ…1/2束
・大根…150g
・人参…1/2本
・海老芋…1個
〈作り方〉
1.出汁に白みそと信州みそを溶かし、酒を加える。味見をして、みりんと醤油で味を整える。白みそと信州みそは種類によって甘味や塩味が違うので、みりんと醤油は、あとで入れて調整する。
2.隠し味に、にんにくと一味を加え、ひと煮立ちさせたら火を止める。
*にんにくと一味を入れることで、出汁に厚みが加わり、味わいにボリュームが出る。
3.猪しゃぶ肉は皿に盛る。九条ねぎは4cmほどに切り、同じく皿に盛る。大根は3cmほどの厚めの銀杏切りにし、人参は4cmほどに切って串切りにする。海老芋があれば、一口大に切る。大根と人参は、それぞれさっと茹でてザルにあげる。海老芋は、串がすっと通るまで蒸す。蒸し終えたら、ラップはせず、そのまま冷ます。
4. 鍋に1の出汁を入れて温め、九条ねぎの白い部分、大根、人参、海老芋を加える。全体が温まったら、九条ねぎの緑部分を入れ、猪肉をしゃぶしゃぶして完成。お好みで、餅を加えてもおいしい。







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和食レストラン兼アトリエ『KOMB』 シェフ&オーナー 原田アンナベル聖子

はらだ・あんなべる・せいこ/2022年、東京・神楽坂に和食レストラン兼アトリエ『KOMB』を起業。「四季の移ろいを大切にする」というブランドコンセプトを体現すべく、多岐に事業を手がけている。自身が料理人として厨房に立つ傍ら、料理教室や瓶詰めの自社EC事業、ファッションブランドのケータリングプロデュースなど行う。

