8年前、父親が亡くなり、信託は「次の段階」へ
その後、父親は亡くなり、信託契約どおり、母親がすべての財産を相続しました。相続税の申告は必要でしたが、配偶者である母親が相続することによって財産の1億6,000万円までは無税という特例を適用しましたので、納税は不要となりました。
この時点では、
・母親はまだ自宅に住んでいた
・大きな資金需要はなかった
ため、信託の力が表に出る場面はありませんでした。父親の信託契約には自分が亡くなったときには財産は母親に相続させること、信託契約はそのまま継続することも記載されていますので、そのとおりにすることで相続税の納税は不要となりました。
しかし、本当に重要なのは、ここからでした。
母親が施設に入り、自宅が「空き家」になった
年月が経ち、いよいよ母親は1人暮らしが難しくなり、介護施設へ入所したのです。
そのため、両親が長年住んできた自宅は空き家になりました。高橋さんも妹も自分たちの家がありますので、実家に戻って住む選択肢はありません。
この状態で、民事信託契約をしていないとどうなるでしょうか。
・母親は認知症になって会話ができないということではありませんが、それでも母親の財産である実家の売却の意思決断はできないこともあり、それでは売却できないとなります。
・その後、認知症が進むと成年後見人をつける必要がある
・売却までに時間も費用もかかる
しかし、以前に民事信託契約をしているお陰で、売却などの手続きはすべて高橋さんが単独でできるのです。15年前の信託契約により、長男が迷わず売却を実行できたのです。
