政府は2025年12月31日、ガソリン税に上乗せされる暫定税率を廃止しました。これにより1リットルあたり25円10銭が減少することになります。ただ翌日、街のガソリンスタンドに赴いてみても、小売価格に目立った変化はありません。なぜなのでしょうか。
ガソリン減税とは
暫定税率の前に、ガソリン減税全体について再確認しましょう。本来、ガソリンにかかるガソリン税は1リットルあたり28.7円です。この内容はガソリン製造と外国からのガソリン輸入時にかかる揮発油税と地方揮発油税、両者を総称して「ガソリン税」と呼ばれています。ここに石油石炭税、消費税が加算され、人件費など諸経費を加えると、我々がガソリンスタンドで利用する際の「小売価格」となります。
小売価格はガソリンスタンドに掲げてある、レギュラー160円・ハイオク180円という記載の価格です。このうち28.7円が「本則税率」です。1952年制定の道路法以後徐々に整備されました。
道路法というだけあり、ガソリン税の本来の使いみちは「道路を整備するためのお金」です。法律制定後に時間が経過し、この道路を整備するお金が無くなってきたため、政府は
「上乗せされた臨時の財源」を設定しました。これが「暫定税率」です。暫定税率は当時、1リットルあたり25.1円と定められました。
時が流れ2010年に暫定税率は廃止が決まったものの、道路補修に「だけ」使うはずだった特定財源の暫定税率が何でも使える一般財源に変わり、今に至ります。その理由は 道路の性能が向上し「ガソリン税を道路だけに使う必要が無くなった」というものでした。使わなくなったのなら減税をすればいいものを、用途変更をするとは様々な思惑を感じます。つまりガソリン税は、臨時的に増額した「1リットルあたり53.8円(本則税率28.7円+暫定税率25.1円)」をずっと維持していたことになります。
ガソリン価格が下がらない理由は「暫定税率と補助金が入れ替わっただけ」
今回の暫定税率廃止で、「ガソリンは1リットルあたり25円ほど安くなる」と考えた人も多かったでしょう。しかし実際には、ガソリンスタンドの店頭価格に目立った変化は見られません。その理由は、暫定税率が無くなる前から、すでに国が補助金で価格を支えていたためです。
政府は、ガソリン価格が急激に上昇するのを避けるため、2025年11月から補助金を段階的に拡充してきました。そして12月には、その補助金額が暫定税率とほぼ同じ水準の25.1円に達しています。つまり、消費者から見れば、暫定税率を「払っている状態」と、補助金で「値上がりを抑えられている状態」が、ほぼ同じ金額で続いていたことになります。
そのため、12月31日に暫定税率が廃止されても、同時に補助金の支給が終了すれば、店頭価格はほとんど動きません。今回の措置は「ガソリンが安くなった」と言うより、本来なら値上がりしていた価格を、これまで補助金で抑えていた状態が補助金がない状態に切り替わったと見るのが実態に近いでしょう。
さらに、この時期の背景として無視できないのが、円安の進行です。日本は原油のほぼすべてを輸入に頼っており、円安が進むと、同じ量の原油を買うのにもより多くの円が必要になります。その結果、原油そのものの価格が変わらなくても、輸入コストは上昇しやすい状況にあります。
こうした中で政府は、税金を減らす一方で補助金を調整し、急激な価格変動を避ける判断をしました。ガソリンの小売価格は、税金だけで決まるものではなく、原油価格、為替、補助金、流通コストなど、いくつもの要因のバランスの上で成り立っているということです。
暫定税率の廃止は制度としては大きな転換ですが、少なくとも現時点では、家計の負担が目に見えて軽くなる政策ではなかったと言えるでしょう。