◆老後を考え“業者”に売ったが最後……

西口征太さん(仮名・62歳)は1年ほど前、伊豆高原の別荘とその周囲の山を中国人に売却した。外国人による北海道や沖縄の土地取得が問題視されていた頃だが、全国的な問題として受け止められてはいなかった。
「持病が悪化し、東京の病院に通院しなければならず、引っ越すことになって。転居後も別荘として持っているつもりでしたが、この年齢になると雑草取りや管理が大変で……。もともと中古で買った物件で、修理や維持も難しくなって、売りに出したんです」
所有していた山林は280㎡、建物の敷地面積は110㎡。仲介する不動産業者から提示された価格は、相場の倍近くの3400万円だった。
「値段もよかったし、話もとんとん拍子に進んで、肩の荷が下りました。空き家のまま放置して不審者が出入りしたりして、近所に迷惑をかけるわけにもいきませんから」
ところが、西口さんの安堵は吹き飛ぶ。近隣住民から、苦情が相次いだのだ。
「解体業者が土日も構わず作業を行い、騒音をまき散らしたうえ、瓦礫もうず高く積んだまま放置していたんです。ご近所さんからは『挨拶もなしにいきなり工事が始まった』『古い建物だからアスベストの健康被害が心配』と苦情が殺到したけど、東京からはすぐに現地に行けず平謝り……。売った先が中国企業と知ったのは、この後でした。この辺りの不動産屋はリゾート物件を扱う業者ばかりで、買った人の国籍なんて気にしない。仲介した業者さえ、売ったが最後、相手と連絡が取れないと言う。まさか、伊豆で中国人が土地を買い漁ってるなんて考えもしませんでした」
◆東京から好アクセスのリゾート地も標的!

「コロナで売り上げが落ち、資金繰りが一気に厳しくなったところに、ボイラーと屋根の修繕で数千万円単位の出費が必要になった。売るか、潰すかの二択を迫られたんです」
不動産業者に相談すると、すぐに反応があった。所有する土地は約700㎡。相場は7000万円ほどだったが、建物込みで2億円という提示だった。
「金額を見た瞬間、目の前が明るくなりました。しかも、支払いは現金一括。当時は預金通帳の残高が日々減っていき、家族が崩壊する寸前。買い手の国籍なんて気にしていられなかった」
相場を大幅に上回る金銭を手にした溝渕さんだが、思わぬ事態に直面する。
「生まれ育った土地にいられなくなった……。石和では中国人による旅館の買収が続いて、住民から反感を買っており、売ったことが知れれば裏切り者扱い。商売人同士は噂が早く広まるし、誰かに何か言われる前にこちらから関係を断ち、家族で引っ越しました。もう故郷には戻れないし、親戚とも絶縁状態です」

