◆「旅館の売り手も買い手も中国人」というケースまで…
笛吹市議で不動産業を営む樋口滝人氏は、生々しい現地の状況を明かした。「旅行業界が大打撃を受けたコロナ禍以降、急速に買収が進み、現在、石和温泉の旅館組合に加盟する32軒のうち、13軒が中国人に買収された。その結果、日本人従業員が大量に減らされたり、地域経済への影響も出ている。東京からアクセスがいいわりに不動産が割安だから、中国人には買い得なんでしょう。買った土地に建てられたメガソーラーや産廃用ヤードに囲まれてしまった畑も珍しくない」

◆無人島にも中国人の食指が伸びている
中国人が買い漁るのは、温泉地やリゾートにとどまらない。副島直彦さん(仮名・65歳)は、山口県周防大島町の瀬戸内海に浮かぶ島の1500㎡の土地を中国人に売った。「この辺の島は景色がいいから引き合いは多い。登記簿で所有者を調べた中国人営業マンが『売ってください』と訪ねてきたりする。ただ、島を買うときはマンションと違ってローンを組むのが難しいから、取引はめったに成立しない。現金一括払いというから、即決しました」
副島さんの島は相場なら500万円程度だが、チャイナマネーの勢いからか2500万円の買値が付いたという。
「水道も電気も自分で引かなきゃならないし、大変ですよと伝えましたが、『どうしても欲しい』の一点張り。今思えば、何が目的なのか……。島を売ったことは、工事が始まって初めて周囲が知る。日本人の領土意識の高まりを痛感した今は、後悔してます」
副島さんが売却した島の約20km先には米軍岩国基地、対岸には伊方原発が立地する。無人島を扱う不動産業・BRIGHTSハウスの佐藤政信代表は、こう懸念した。

中国人に土地を売った人々は故郷を捨て、関係を断ち、元の場所に戻れなくなった。残された土地は、今も静かに所有者を変え続けている。
【山梨県笛吹市議・樋口滝人氏】
山梨県PTA協議会長などを経て現職。建設経済常任委員会委員。市民参加型の政策を推進する。山梨県社会教育委員。宅地建物取引士
【BRIGHTSハウス代表・佐藤政信氏】
日本で唯一の無人島専門不動産会社アクアスタイルズを設立。豪州に拠点を移し、現職。著書に『無人島売ります!』(主婦の友社)
取材・文/山本和幸 齊藤武宏
―[中国人に土地を売った人の苦悩]―

