◆炎上系YouTuberは開き直っている
「もちろん彼らも、自分たちがグレーな活動をしていて、批判に晒されていることも重々承知です。それでも強引な手法がベストだと断言する。仮に暴行罪や名誉毀損で逮捕されたとしても、『その時は仕方ない』と腹を括っている。つまり、彼らは無敵の人というか、開き直っている節もあるんですよね。対して、日本人の風潮として『良いことは陰でそっと行う』のが美徳とされていると思うんです。そうした価値観が浸透している中、誰かに依頼されているわけでもないのに盗撮魔を捕まえたり、動画を回して再生回数や収益を追い求める姿に、嫌悪感を覚える人は多いのではないでしょうか。
つまり、批判する人たちと、私人逮捕系YouTuberらの溝は埋まらないのだろうと痛感しました」
過度な内容を発信すれば、広く拡散されて犯罪の周知や抑止になり、自身のチャンネルの再生回数や登録者数も増える。逮捕や批判、垢BAN(YouTubeチャンネル停止)のリスクも顧みず、ギリギリを攻めるのが私人逮捕系YouTuberのスタンスと言える。
◆月収は13~14万円…リスクのわりに稼げない?
著書『炎上系ユーチューバー』では、彼らの収入事情についても明かされている。前出のフナイム氏は、動画の収入に加え、週4回ほどの清掃や解体の現場仕事を行い、月収は13~14万円ほど。スーパードミネーターも生活費をなんとか捻出できるほどの状況だと明かされている。
リスクを犯し、批判に晒されるなか、私人逮捕系YouTuberの道を選ぶのはなぜか。肥沼氏は「自己実現のために、正攻法ではなくカウンターを選んだのでは」と考える。
「社会的に見れば、良い大学を出て大手に就職したり、起業して富を得たりするのが、一般的な成功や自己実現だと言われています。ただ、生まれ育った生い立ちや環境、一時の過ちなどが影響して、正攻法のルートを断たれた場合はどうすればいいのか。
その限られた手段が、SNSやインターネットを活用した『バズり』で、一気に知名度や影響力を上げることだと考えています。元不良がブレイキングダウンに出演して成り上がりを目指すように、私人逮捕系YouTuberもなりふり構わず一発逆転を狙っている。取材した当人の中には、将来『政治家になりたい』と明かす人もいました。
もちろん彼らのやり方は擁護できませんが、その反面で活動を続けている想いは共感できる側面もある。彼らに肩入れするつもりはないですが、私人逮捕系YouTuberが発生した社会背景を理解することは重要だと考えています」

