◆バズることで得られる自己実現
内容が過激になり、その是非が問われるほど、支持者とアンチの分断は深まる。SNSやコメント欄での罵り合いに留まらず、炎上系YouTuberを支持した投稿を行うだけで、ネット上に個人情報が晒されたり、職場に殺害予告が届いたりした事例もある。無意識のうちに『ネット私刑』に巻き込まれる、あるいは自分が加担してしまう可能性も否めない。
炎上系や私人逮捕系YouTuberの是非はさておき、いち視聴者としては一定の距離を保つことが求められる。
「ネットリテラシーを持つために、大きく2つを理解しておくべきだと考えています。
1つ目は、人間は『他人の不幸は蜜の味』だと感じる生き物であること。著名人のスキャンダルや不祥事などゴシップ記事を閲覧したくなるように、人には野次馬根性が備わっています。私人逮捕系YouTuberの動画を見て、容疑者と思われる人物が制裁されるのに痛快さを感じているのも、彼らが支持される一因だと考えています。
2つ目は、『社会全体にアテンション・エコノミーが浸透している』こと。アテンション・エコノミーとは、人々の関心や注目を集めることを、経済的価値に置き換えた概念です。ネット上に膨大な情報が溢れる現代では、閲覧や拡散したくなるコンテンツの方が、金銭的価値になりやすく重宝されやすい。それは言い換えれば、質の高く信憑性のある情報より、有益でなくても人々の目を惹くコンテンツが優先されやすい土壌が出来上がりつつあるということです。
こうした状況下で、誹謗中傷やデマが飛び交ったり、あるいは炎上商法や印象操作を諮って発信を行う人や企業がいるのも事実です。信頼している人が発信した情報であろうと、盲信せずに一度立ち止まって考えるのが賢明でしょう」
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今では、垢BANや逮捕された私人逮捕系YouTuberも続出して、波は下火になりつつある。
ただ、再生回数や知名度を狙って、似て非なるやり方で物議を醸す存在は出てくるはずだ。そうしたコンテンツに触れた際、ともすれば視聴者の反応ひとつひとつで、次の“無敵の人”が生まれる構造は、頭の片隅に留めておくべきだろう。
<取材・文/佐藤隼秀>
【佐藤隼秀】
1995年生まれ。大学卒業後、競馬会社の編集部に半年ほど勤め、その後フリーランスに。趣味は飲み歩き・散歩・読書・競馬

