子育てが一段落し、ご夫婦二人でのこれからの暮らしを考え始めたとき。あるいは、日々の階段の上り下りに、少しずつ負担を感じるようになったとき。多くの方が、ライフステージの変化に合わせて住まいの形を見直しています。
なかでも今、注目を集めているのが「平屋へのリノベーション」です。
ワンフロアで生活が完結する平屋は、動線がシンプルで暮らしやすいのが大きな魅力。将来を見据えたバリアフリー設計もしやすく、安心して快適な毎日を送ることができます。
この記事では、そんな平屋リノベーションに関する様々な疑問やご要望に、分かりやすくお答えします。
中古の平屋を、自分たちらしくリノベーションしたい
今の2階建てを減築し、コンパクトな平屋にしたい
気になるリノベーション費用は、一体どれくらい?
費用相場はもちろん、快適な空間をつくるためのポイント、後悔しないための注意点、そして参考になる施工事例まで。理想の住まいを実現するための情報を網羅しましたので、ぜひ最後までご覧ください。
1.【パターン別】平屋リノベーションの費用相場はどれくらい?
平屋リノベーションの費用は「どんな物件を」「どのようにリノベーションするか」によって大きく変動します。
ここでは、「中古の平屋を購入してリノベーションする場合」と「今お住まいの2階建てを減築して平屋にする場合」に分けて、それぞれの費用相場や特徴を詳しく見ていきます。
1-1.「中古購入」vs「減築」どっちがいい?費用と特徴を徹底比較
まずは、どちらのパターンがご自身の状況や希望に合っているか、以下の比較表でチェックしてみましょう。
| パターン | 中古平屋を購入して リノベーション |
今の家を減築して 平屋にする |
|---|---|---|
| 総額費用 の目安 |
物件価格 + 50万~2,500万円 | 600万~2,500万円 |
| 費用の内訳 |
物件購入費 リノベ費用 諸費用 |
解体費 屋根・外壁工事費用 内装工事費用 諸費用 |
| メリット |
住みたいエリアを選べる 土地から探せる 新築よりコストを抑えやすい |
建て替えより安い場合が多い 住み慣れた場所で暮らせる 固定資産税が安くなる可能性 |
| デメリット |
希望の物件が見つかるとは限らない 物件の状態により追加費用がかかる |
既存の構造に制約される 大規模な工事になる場合がある |
| こんな人に おすすめ |
住みたいエリアが決まっている人 土地を持っていない人 |
今の家に住み続けたい人 子供が独立した夫婦 |
通勤や通学、買い物などの利便性などを考えて住む場所を変えたい場合は「中古購入」、お子様が独立し、住み慣れた我が家でこれからも暮らしたいご夫婦なら「減築」が有力な選択肢となるでしょう。
「中古平屋購入+リノベーション」の費用中古の平屋を購入してリノベーションする場合、総費用は「物件購入費+リノベーション費用+諸費用」の合計です。
例えば、物件価格1,500万円の平屋を購入し、1,000万円かけてフルリノベーションする場合、総額は2,500万円となります。
これに加えて、物件購入時には諸費用(仲介手数料、登記費用、不動産取得税、火災保険料、ローン手数料など物件価格の6〜9%程度が目安)が別途必要になる点も忘れてはいけません。予算計画に必ず組み込むようにしましょう。
中古住宅の物件探しから購入、リノベーションするまでの流れについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
中古住宅購入リフォームの流れがまるわかり!お役立ち情報もご紹介
「2階建てを減築」して平屋にするリノベーション費用今お住まいの2階建てを減築して平屋にするリノベーション費用は、600万〜2,500万円程度が相場です。
主な工事内容は、2階部分の解体や屋根の架け替え、外壁の補修、内装工事などです。特に、構造上の補強がどの程度必要になるかで費用は大きく変動します。
「いっそ建て替えた方が良いのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの場合、減築リフォームの方がコストを抑えられます。
なぜなら、建て替えの場合は家全体を解体し、基礎工事からやり直す必要があるのに対し、減築は既存の基礎や1階部分を活かせるためです。
減築リフォームの方法や注意点、費用相場についてはこちらの記事も併せてお読みください。
2階建てを平屋に減築リフォーム!費用や注意点・建て替えとの比較も
【実例付き】減築リフォーム6種を費用、補助金も併せて完全解説
1-2.【工事内容別】リノベーション費用の内訳と目安
平屋のリノベーション費用は、工事内容によって大きく異なります。主な工事内容別の費用相場をまとめましたので、予算を考える際の参考にしてください。
| 工事内容 | 費用相場 | 主な工事内容 |
|---|---|---|
| フルリノベーション (スケルトンリフォーム) |
1,000万~2,500万円 | 間取り変更、内装、水回り、外装、性能向上など全て |
| 内装 | 50万~200万円 | 壁紙・床材の張替え、建具交換、間仕切り壁の設置・撤去 |
| 水回り設備交換 | 150万~500万円 | キッチン、浴室、トイレ、洗面台の交換 |
| 外壁・屋根 | 50万~500万円 | 外壁の塗装・張替え、屋根の葺き替え・カバー工法 |
| 耐震補強 | 50万~300万円 | 基礎の補強、壁の補強、補強金物の設置 |
| 断熱改修 | 50万~200万円 | 壁・床・天井への断熱材充填、高断熱窓への交換 |
中古住宅のリフォームの内容と費用相場については、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。
中古住宅のリフォーム・リノベーションの費用相場|補助金やローンも解説
(参考)古い平屋(古民家)のリノベーション費用と注意点
趣のある古民家や、築40年以上の古い平屋を自分好みにリノベーションするのも近年人気を集めています。しかし、古い家ならではの注意点があり、想定外の追加費用が発生する可能性も考慮しておく必要があります。
[1]耐震性能不足1981年(昭和56年)以前に建てられた、いわゆる「旧耐震基準」の建物は、現在の耐震基準を満たしていない可能性が高いです。その場合、専門家による耐震診断と、結果に応じた補強工事が必須となります。
[2]断熱性の低さ昔の家は、壁や床に断熱材が入っていないことも珍しくありません。夏は暑く冬は寒い家になりがちで、ヒートショックのリスクも高まります。快適な暮らしと光熱費削減のためにも、断熱改修は優先的に検討したい工事です。
[3]雨漏りやシロアリ被害長年の経年劣化により、屋根や外壁から雨漏りしていたり、土台や柱がシロアリの被害に遭っていたりするケースがあります。工事を始めてから発覚すると、大幅な追加費用と工期の延長につながるため、契約前のホームインスペクション(住宅診断)で建物の状態をしっかり確認することが非常に重要です。
[4]設備の老朽化キッチンや浴室といった設備そのものだけでなく、給排水管や電気配線が寿命を迎えていることもあります。目に見えない部分ですが、安全な暮らしのためには更新が必要です。
古民家リフォーム・リノベーションの費用相場やプロに聞く優先すべき箇所!
古い家のリフォームは何からするべき?優先順位・費用を詳しく解説
2.なぜ今、平屋リノベーションが人気?暮らしを豊かにする3つの魅力
平屋リノベーションには暮らしをより豊かに、快適にしてくれる多くの魅力があります。なぜ多くの人が平屋を選ぶのか、その3つの魅力を見ていきましょう。
2-1.ワンフロアで完結する、効率的で安全な暮らし
平屋の最大の魅力は、すべての生活空間がワンフロアに収まっていることです。
洗濯物を干すために、掃除機をかけるために、いちいち階段を上り下りする必要がありません。家事動線が水平移動だけで完結するため、日々の家事負担がぐっと軽くなります。
階段がないことは、年齢を重ね足腰が弱ったときの大きな安心材料になります。段差を無くし手すりを設置するなど、将来の介護も見据えたバリアフリー設計がしやすいのも平屋ならではのメリットです。
ワンフロアに家族が集まることで、自然とコミュニケーションが生まれやすくなります。それぞれが別のことをしていても、お互いの気配を感じられる。そんな心地よい距離感が、家族の絆を深めてくれます。
2-2.デザインの自由度が高く、自分らしい住まいを実現
中古物件をリノベーションすることで、間取りや内装デザインを自分たちのライフスタイルに合わせて一から作り上げることができます。新築同様、あるいはそれ以上に価値のある、世界に一つだけの住まいを手に入れられるのです。
また、平屋は2階の重さを支える必要がないため柱の本数が少なくなります。屋根の形を活かした勾配天井にしたり、大きな窓や天窓を設けたりと、開放感のある空間を演出しやすいのが魅力です。
2-3.維持費が割安で、ライフプランも安心
長期的な視点で見ると、平屋は維持費を抑えられるという経済的なメリットもあります。
平屋のコンパクトな空間は冷暖房効率が良く、月々の光熱費を抑えることができます。特に断熱性能を高めるリノベーションを行えば、その効果はさらに大きくなります。
平屋は2階建てに比べて外壁の面積が少なく屋根の構造もシンプルなため、将来的な外壁塗装や屋根の葺き替えといったメンテナンス費用を安く抑えられます。外装リフォームの際も足場を組む必要がない、あるいは小規模で済むため工事費用も割安です。
一般的に、同じ延床面積であれば2階建てよりも平屋の方が固定資産税評価額は高くなる傾向にありますが、減築によって床面積が減れば、税額も下がります。

