だが、世間の関心はそこではない。だが、それで腑に落ちる人はどれほどいるだろうか。会見で繰り返されたのは、組織としての反省と再発防止策。だが、被害者が本当に知りたいのは、そんな“総論”ではない。
・社名や肩書きを“信用の盾”にして顧客をだました営業社員たちは、刑事責任としてどこまで追及されるのか。
・消えた31億円の裏で、個々の“詐欺師”は実刑を免れるのか。
「組織的な関与はない」「手口の共有はなかった」と会社は説明するが、それで個人の責任は軽くなるのだろうか。企業が補償に動く一方で、不正に手を染めた社員個人の行為は、刑法上どのように評価され、どんな結末を迎える可能性があるのか。刑事責任という観点から、この事件を整理していく。

◆社名を使った“架空投資”は即アウト。詐欺罪が真正面から成立する
まず問題となるのは、営業社員個人がどのような罪に問われるのかという点だ。アディーレ法律事務所の南澤毅吾弁護士は、「今回のように架空の投資話で顧客から金銭をだまし取った場合、営業社員個人は刑法246条の詐欺罪に問われる可能性が極めて高い。嘘をついて金銭を受け取っているわけですから、警察官や家族を装ってお金をだまし取る特殊詐欺と、構造的には何ら変わりません」と断言する。
ただし、今回の不正騒動には「実態がある投資話に勧誘したケース」も含まれているという点には注意が必要だ。
「顧客が投資の実態を把握し、リスクを理解・納得した上で投資していたのであれば、社内規定や保険業法上の問題はあっても、詐欺罪に当たらないケースもあり得ます」
不正に関与した社員・元社員が100人以上にのぼると報じられているが、全員が一律に詐欺罪に問われるわけではないという。
◆数百万円でも実刑は避けられない。3〜5年が“最低ライン”
では、この“詐欺”に、刑事司法はどれほど重い答えを突き付けるのか。被害額が数百万円規模と数千万円規模が混在する今回のケースについて、南澤弁護士はこう見る。「一般論として、被害額が大きいほど量刑は重くなります。ただし今回は、有名保険会社のネームブランドを使って詐欺に及んだという悪質性が共通しています。そのため、金額差によって極端な量刑差が生じるとは考えにくいでしょう」
そのうえで、かなり踏み込んだ見通しを示す。
「数百万円規模であっても、適切な賠償が行われなければ、実刑3〜5年は最低ラインと想定されます。被害者が多数に及ぶ場合や、被害額が数千万円規模であれば、本人や会社による弁済・補償があったとしても、5年以上の実刑判決も現実的です」

