Episode ④偽名と偽所属を伝えて秘書の壁を突破
次にご紹介するのは、今後業界全体を担う後継者として嘱望されていた、ある交通システムのエンジニアの案件です。当時、彼が勤務していたのは交通システム会社の最大手で、接触さえできればスカウト成功率は高いと考えられました。しかし業界の狭さゆえ、ターゲットは彼一人しかおらず、失敗は許されません。
調査の結果、ターゲットは学会に頻繁に出席しており、海外の学会にも参加していることが判明しました。そこで私は、アメリカで学会が開かれる際、「以前〇〇件でお話しした〇〇と申します」と電話口で偽名を名乗り、ターゲットに取り次いでもらうことに成功。電話で本名と用件を伝え、粘り強く交渉した結果、見事スカウトに成功しました。
ヘッドハンティングとはまさに「狩猟」。依頼企業の期待に応えるため、限界まで挑戦する覚悟が必要です。
Episode ⑤奥様に花束を持参
財界トップレベルの人物は、社内では幅を利かせつつも、家では奥様に頭が上がらないことが多いようです。接触の確率を上げるため、奥様宛に花束やプレゼントを届けることもありました。もちろん、奥様が在宅していることを確認した上で、企業の名代として訪問します。
この候補者は最終候補まで残りましたが、残念ながら別の人物が優先となりました。失敗も多いものの、接触自体に成功していることが重要です。ヘッドハンターの使命は、「人の心も人間関係も水もの」と心得つつ、クライアントにベストを尽くすこと。そして、唯一無二のターゲットに接触できた時の充足感は格別です。
