
相手の話がよく聞きとれなかったり、聞き間違えたりといった耳の不調。更年期に多くなる不調のひとつです。
しかし耳の不調を感じていても、そこまで生活に支障をきたすわけでもないから⋯⋯と、放っておいたりしていませんか?
実は耳の不調には、よく聞こえないということ以上に「老化進行のボーダーライン」という重要な意味が。その原因や養生法をしっかりチェックしていきましょう
「ときどき聞こえにくい」のは、老化が本格化する一歩手前のサイン

最近、こんな経験はありませんか?
✔ 会話中に「え?」「なんて言った?」などと聞き返すことが多くなった
✔「1時」が「7時」に聞こえるような、ちょっとした聞き間違いが増えた
✔ お店のレジなどで、マスクをした店員の声がよく聞きとれないことがある
こうした「ときどき聞こえにくくなる状態」は一見大したことではないように思われますが、実は老化が一歩進むかどうかのボーダーラインの現象。決して軽視できないのです。
東洋医学では、五臓の「腎(じん)」に発育、成長、生殖などのもととなる生命力が蓄えられていると考えられています。そしてその腎の中心には“生命力の種”となる「腎精(じんせい)」が蓄えられていますが、腎精の量は加齢や過労、不規則な生活習慣などの要因で徐々に減少し、やがて「腎精不足」と呼ばれる状態に。この腎精不足は突然発生するものではなく、次のように初期→中期→後期とじわじわと進んでいきます。
◉腎精不足で起こる不調
初期⋯⋯疲れがとれない、集中力が続かない、白髪、脱毛、頻尿、夜間尿など
中期⋯⋯更年期の不調、腰やひざのだるさ・痛み、歯がしみる、歯ぐきが弱るなど
後期⋯⋯慢性的な腰痛・ひざ痛、骨粗しょう症、歯が抜ける、強い耳鳴り、慢性的な難聴、記憶力・判断力の低下など
腎精不足で起こる不調は、いわゆる老化現象の中核となる不調です。また、腎と耳はつながっていると考えられていて、深い関係があります。その耳の不調は、腎精不足の中期から後期に1段階進みかけたボーダーラインで多く見られるようになるのです。
つまり「ときどき聞こえにくくなる状態」は、これ以上腎精を消耗すると本格的な老化の段階へと進んでしまうという警告。なる早で養生をはじめたほうがいい状態だと言えるでしょう。
冬の終わりの「大寒(だいかん)」は耳の不調が現れやすい

聴力の低下や耳鳴りなどの耳の不調はこの時期に最もよく現れやすいのですが、個人差があります。では、この時期に耳の不調が現れやすい人にはどんな傾向があるのでしょうか。
東洋医学では、冬は「閉蔵(へいぞう)」の季節と言われています。これは読んで字のごとく、秋に収穫した米を収めた蔵の扉を冬になったらしっかり閉じて保存するように、秋までに体に蓄えたエネルギーや栄養などを冬に体外に漏らさないように体を閉じるという意味。また、冬はエネルギーや栄養の消費を極力抑えて、春に備えてしっかりとエネルギーや栄養を摂取して養っておくという意味もあります。
しかし、冬の間にこの閉蔵の摂理に逆らう生活を送ってしまうと、腎精が消耗されてしまうことに。例えば次のような生活習慣は、閉蔵に逆らって腎精を消耗してしまう冬の過ごし方だと言えます。
◉サウナやホットヨガで大量の汗をかく
人工的な高温環境での強制的な大量発汗は、腎に蓄えられたエネルギーが汗と一緒に体外へ放出されるため、腎精を損なうことに。
◉激しい有酸素運動
軽く汗ばむ程度の有酸素運動は冬の養生として効果的ですが、大量の汗をかく激しい有酸素運動は腎精の消耗につながります。
◉夜の外出や活動が多い
冬の夜は腎精を体内にチャージする時間。この時間帯に多く外出していたり活動的に過ごしたりすると、腎精のチャージが十分に行われません。
◉夜遅くまでパソコンやスマホを見る
脳は腎精に支えられているので、パソコンやスマホを見て脳を酷使することは腎精の消耗を招きます。
◉23時以降も起きている
23時~午前3時は腎精を蓄える睡眠のゴールデンタイム。この時間帯に起きていると腎精を蓄える量が減少します。
◉太りやすさを気にして過度にダイエット
冬は太りやすい季節なので、ダイエットを意識する人も多いでしょう。しかし過度に穀物や肉類などのたんぱく質が不足すると、腎精が不足しがちに。
これらに当てはまる項目が多ければ多いほど、冬の間に腎精を消耗してしまい、冬の終わりである「大寒(だいかん=2026年1月20日~2月3日)」の頃には腎精不足となって耳の不調が現れやすくなるのです。
ただ、上記の項目をすべて回避して冬を過ごせたという人は、なかなかいないでしょう(すべてクリアしたという人は本当に素晴らしいです!)。
大切なのは、こうした季節と体のつながりについて知っておくことです。冬は閉蔵の季節であり腎精を蓄える季節であること、腎精の不足はさまざまな老化現象につながること、そのボーダーラインが耳の不調であるということ⋯⋯これらを知っておくことで、耳の養生がいかに大切かが理解でき、養生に対するモチベーションにもつながるでしょう。

