桜木はリハビリの天敵
──桜木のケガが骨折だとしたら、どのようなリハビリで復帰を目指しますか?
橋本さん:理学療法士や作業療法士はドクターの指示で動くのであくまで個人的な意見ですが、骨が折れて支える能力が落ちているので、コルセットで患部に負担がかからないようにします。

橋本さん:骨折するほどの衝撃ということは、筋肉や靭帯の損傷、関節の機能障がいを起こしていることが予想されます。基本的に安静にして、痛みや腫れを除いてから運動療法に移行します。
まずは抵抗運動から始めますかね。脚を持って適度な負荷をかけながら筋力を上げていくイメージです。あとはゴムチューブを使ったトレーニングなどをしていきます。
このように患部に負担がかからないようなリハビリから始めて、体重を支えても痛みがなくなってきたらスクワットやランジといったウェイトトレーニングに移行します。
──下半身から鍛える理由は?
橋本さん:下半身のトレーニングをすることで患部に近い体幹のインナーマッスルが収縮してくれるんです。
適度な筋収縮の刺激は骨芽細胞に良い刺激を与えて、骨折の治りを早くするといわれています。この辺を見定めながらリハビリしていきますね。
Aさん:トレーニングで使うゴムバンドの選び方や負荷の強度がまた重要なんですよね。これを間違えると効果が出ないどころか、まったくの逆効果になることもあります。
なのでリハビリは専門家立ち合いのもとおこなったほうがいいんです。桜木は“自分の体を動かす天才”かもしれないけど、治すことに関しては素人ですから。
橋本さん:疲れていても気合いで乗り越える性格でしょうね。そういう意味では桜木はリハビリの天敵ですよね。オーバーワークにならないようやめどきを見定めるのがポイントになると思います。
──バスケットボールを使ったトレーニングはいつから開始できそうですか?
橋本さん:すぐにできますよ。ベッドでバスケットボールを触らせながらYouTubeなどでバスケの動画を観てもらって、イメージトレーニングをしてもらいます。
指先の感覚ってすごく重要なので、常にボールを触っていたほうがいいですね。サッカー漫画で『ボールは友だち』ってあるじゃないですか。そのとおりなんです。
──復帰までにどれくらい時間がかかりそうですか?
橋本さん:骨折の程度によりますが、僕の経験上どんなに早くても3ヶ月、長くて8ヶ月はかかりますね。
専門職だからこそ読み取れる痛みの描写

橋本さん:転倒のあと、桜木の呼吸が「ぜいぜい」になっているじゃないですか。これは胸椎レベルの影響で呼吸が浅くなっていると読み取れますね。
肺が一回の呼吸で酸素を出し入れする能力は、胸郭(心臓や肺が収められている籠状の骨格)の膨らみが関わってきます。肺は膨らもうとするけど骨折部位があって胸郭が満足に膨らまない状態なのでしょう。でも酸素は必要だから回数で補おうとして、浅い呼吸が増えていると考えられます。

橋本さん:桜木がダンクしたあと、フラフラして倒れ込みますよね(単行本第30巻 168ページ)。これは呼吸が乱れているうえに短時間で無酸素で激しく動いたため、軽い酸欠状態になっていると考えられます。
Aさん:右手でのワンハンドダンクのあと、顔が歪んでいるのは激痛だからでしょうね。
橋本さん:赤木が河田をブロックして桜木がルーズボールを取るシーンも見てください(単行本第31巻 78ページ)。ここで腕を挙げているじゃないですか。この動きで「ピキッ」となるということは、広背筋や脊柱起立筋などが収縮して患部である胸椎にストレスがかかっていると推測できますね。

橋本さん:桜木と流川がタッチをするあの感動的なシーンも見方が変わってきます(単行本第31巻 154、155ページ)。めちゃくちゃ強烈に叩き合ってるじゃないですか、激痛ですよこれは。
Aさん:高速で力強くひねっているうえに、強烈にタッチをしてるわけだから痛いでしょうね。試合に出たこと自体が治りを遅らせる危険な行為だけど、あのタッチでさらにダメになった可能性はありますね(笑)。
橋本さん:流川がトドメを刺したとも言えます(笑)。リハビリの視点で読み返してみると、細かい描写のつじつまが合っているのがよくわかりますね。

