投資初心者が共通して失敗すること
投資で利益が出る人の割合は、どのくらいでしょうか。金融庁が2021年2月に発表した、2020年12月末時点の「安定的な資産形成に向けた金融事業者の取り組み状況」では、投資信託で収益がプラスになった人は、全体の約3割という調査結果です。この結果は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けたもので、2019年3月末時点と比較すると、約半分とされています。投資は、市場の変動の影響を受けるなどの特徴がありますので踏まえておきましょう。
投資を初めて行う人が、失敗しがちな投資方法には、いくつかの共通するパターンがあります。
・知識が不十分なまま始める。・投資をする計画や目的が曖昧なまま始める。
・感情に左右された取引をする。
・特定の銘柄に集中的に投資する。
・短期的な利益を追求する。
・損切りのルールを決めていない
などが主なものです。投資を始める前に、まず基本的な知識を身に付けましょう。大手金融機関のウェブサイトを確認したり、信頼できる書籍を購入したりして、週末の時間があるときにじっくり学ぶなどはいかがでしょうか。
短期間で大きく利益を上げたとする、魅力的なタイトルの本も出版されています。しかし過度な期待は禁物です。投資は得意な人もいれば、あまり得意ではない人もいます。自身に合わせた方法で資産形成を進めることを推奨します。
「とりあえず投資」の落とし穴
橋本さん夫婦は、すべてを失ったわけではありませんでした。しかし、その後の暮らしは悲しいものでした。多額の損失を埋め合わせようと、日々の生活を切り詰めるようになったそうです。夫婦関係は修復できなくなってしまったのです。
「いままで、恵まれすぎていたんですね……」俊さんが零しました。
1,600万円という高収入は、橋本さん夫婦の無計画な行動を正当化する根拠にはなりません。むしろ高収入であるという自信が、投資のリスクに対する感覚を麻痺させてしまったのでしょう。
「とりあえず投資」は危険です。投資の目的や目標額を明確にして、計画的に行いましょう。生活を守るための資金を確保したうえで、投資は、当面使う予定のない余裕資金で行うのが基本です。また、自己責任のもとに行い、周囲の人の意見や情報を鵜呑みにせず、自分で判断する力を養うことが大切です。
お金があるからこそ陥る落とし穴に気づき、賢く計画的に資産形成を進めることこそが、未来を守る唯一の方法ではないでしょうか。
〈参考〉
金融庁 安定的な資産形成に向けた金融事業者の取り組み状況 P5
https://www.fsa.go.jp/news/r2/kokyakuhoni/202102/20210226_kpi_kohyo.pdf
藤原 洋子
FP dream
代表FP
