◆冷凍でも過信禁物。鮮度を逃さず食べ切ろう

「カニは温度変化に弱いうえに、水分管理も重要。一般家庭の冷蔵庫・冷凍庫で保存する時は、(1)温度が一定に保たれやすい場所に置き、(2)水分を吸収する準備をして、(3)急激な温度変化を避ければ、カニの美味しさをキープできます。具体的にはまずキッチンペーパーでカニ全体を包み、それをジッパー付きポリ袋やラップで密閉して、空気を抜いて二重包装にすれば、乾燥も防げて味を守れますよ」
一方、カニは生来のサイズがかなり大きい生き物でもある。冷蔵庫のサイズによっては胴体と腕を分割しなければならない場合もあるが、この時の注意点は何か。
「切り分けると表面積が増えて乾燥が進みやすいので、基本的には丸ごと(分割せず)保存するのを推奨します。ですが、保管スペースの都合でどうしても分解したい場合は、切り口が空気に触れないよう1本ずつ丁寧にラップし、空気をしっかり抜いてください」
また、越前かに職人「甲羅組」の田辺さんは生のカニとボイルカニで取り扱いが大きく変わることにも触れた。非冷凍の生カニは非常に鮮度が落ちやすく雑菌が繁殖しやすいため、そもそも長期保存に向かず、当日中に食べ切るのが基本だという。
「どうしても保存する場合は、先ほど伝えたキッチンペーパー・密閉・二重包装を徹底して、それでも翌日が限界と考えてください。一方、ボイルカニは加熱処理がされているので生より保存性が高く、冷凍でなくとも2日ほどは品質を保ちやすいです」
なお、冷凍品であれば生カニは2~4週間、ボイルカニは2~3週間が保存目安とのことで、むしろ生カニの方が長く保つ場合もありそうだ。とはいえ冷凍でも時間が経てば、冷凍焼けや乾燥で身のふっくら感や香りが弱まるほか、ドア開閉で表面温度が上下するたびに霜がつき、さらに水分が奪われて変色や脂臭の原因ともなる。冷凍であってもカニは早めに消費するのが肝心だ。
◆レンジは厳禁…流水1分と冷蔵庫解凍の掟

「カニの表面には冷凍保管時の乾燥を防ぐため『グレース』と呼ばれる氷の膜が張られているので、まずは食べる分量のカニを取り出し、流水に約1分間あててグレースを落としてください。グレースが落ちたらカニを仰向け(甲羅が下)にして置き、冷蔵庫内で1日程じっくり自然解凍しましょう。たとえ急いでいても電子レンジや熱湯での解凍は厳禁です」
カニを食べる時は前日から余裕を持った準備が大切ということだ。また、生ガニの場合は解凍してから時間が経つと酸化して黒く変色してしまうため(※黒変自体は食べても無害)、解凍開始~実際に食べるまでのタイミングも考慮を要する。最初に流水にさらす時も、時間が長すぎると旨味が抜けてしまうので注意が要る。
「また、カニの旨みを保ちつつ急速凍結する『ブライン凍結』が用いられる場合もありますが、この手法で凍ったカニは食塩水を吸い込んで身が塩辛くなりがちです。これを美味しく食べるためには、大きい鍋で湯(カニ1kgに対しお湯3L)を沸騰させてから火を止め、湯が70~80℃程度まで冷めてから、カニを20~35分ほど湯にくぐらせる『塩抜き』工程がおすすめです」
こうした丁寧な下処理を経て、初めてカニの身は真価を発揮する。それをいざ食べようと(もしくは調理しようと)殻から外す時、もちろんカニ用スプーンがあれば使うべきだが、手元に無い時はどうすれば最適か。
「脚はキッチンバサミや包丁の背で、側面に縦一本の切れ目を入れるのがコツです。完全に割ろうとせず、切り目を入れたら指や箸で殻を開き、身を引き抜くと比較的きれいに外せますよ。関節や細い脚は竹串やつまようじなど細いもので、殻の細い方から太い方へ押し出すと、身が途中で切れにくいです。胴体(甲羅)に残った身は、箸やフォークで少しずつほぐしてかき出すのが無駄なく現実的ですね」
ポイントは(1)無理に殻を砕かない、(2)切れ目を入れて開く、(3)細い道具で押し出す……の3点。これで特別な道具がなくともカニの身を取り出せる。

