
相続対策において最も重要なのは、未来の関係を築くための「家族間での話し合い」です。本記事では、LIFE Group の著書『相続家族会議のすすめ: 安心と信頼の遺産相続は「事前準備」が10割』(時事通信社)から、「家族会議」を円滑に進めるための工夫を解説します。
相続で一番大切なのは「話し合い」
相続対策において最も重要なのは、制度や専門家の知識よりも「家族間の話し合い」です。どれほど法律的・税務的に優れた対策を立てても、家族が納得しないまま進めれば感情的なしこりを残し、結果的に争いの火種をつくってしまいます。
また、ご本人の意思も非常に大切ですので、ご本人のご希望を前提に話し合いをする必要があります。相続の話し合いは、遺産分割を決める場であると同時に、家族の価値観や思いを共有し、未来の関係性をつくる大切な機会でもあります。
とはいえ、「家族会議を開こう」と唐突に切り出してもうまくいくとは限りません。長年、お金や将来の話題を避けてきた家庭も多く、重いテーマに踏み込むことに抵抗を感じるのが普通です。そこで重要になるのが、「誰が、どう切り出すか」という第一歩です。
例えば長男が「実家のこと、そろそろ話しておいた方がいいよね」と軽いトーンで話題にしたり、テレビやニュースで相続トラブルの事例が出た時に「これ、人ごとじゃないかもね」と自然に入り口をつくったりすると、心理的ハードルが下がります。
話し合いの初回から結論を出そうとする必要はありません。まずは「今の気持ちを共有する場」として設定しましょう。現時点での考えや不安、希望を出し合うことで、お互いの立場や事情が見えてきます。
例えば、親が「この家にはできるだけ長く住みたい」と思っていても、子どもたちは「老後の生活費や維持費の負担が心配」と感じているかもしれません。こうした認識の違いを早い段階で把握することが、納得感ある相続への土台になります。
家族会議を円滑に進める工夫
家族会議を有意義にするには、進め方の設計が欠かせません。
開催のタイミング
親が元気で判断能力がしっかりしているうちに始めることが理想です。病気や認知症の進行後では意思確認が難しくなります。
参加メンバーの選定
原則として相続人全員が参加するのが望ましいですが、初回は子世代だけなどで始めても構いません。
議題の事前共有
「実家の扱い」「不動産の分け方」「預貯金の分配」などテーマを事前に示し、必要な資料を用意しておきます。
進行役の設定
家族の一人が務めてもいいですが、利害関係のない第三者(弁護士、行政書士、相続コーディネーターなど)に依頼すれば公平性が保たれます。
話し合いのルール化
「話している人の意見は最後まで聞く」「批判より提案を優先する」などを決めておくと、感情的な衝突を防げます。
合意形成の方法
まずは本人の希望、その後に全員の希望をホワイトボードなどに書き出し、「絶対に譲れない条件」と「柔軟に対応できる条件」に分類して整理すると妥協点が見えやすくなります。
さらに、話し合いの内容は記録として残すことも大切です。議事録を作り、後から確認できるようにしておけば、記憶の食い違いによるトラブルを防げます。また、一度決めた内容も家族の事情や資産状況、税制改正に応じて定期的に見直すことが望ましいでしょう。
家族会議は、単に遺産を分けるためのものではなく、家族が互いを理解し、未来の関係を築くためのプロセスです。上手に進めれば、相続は「争族」ではなく「想続」──思いをつないでいく場に変えられます。
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