◆加害者への行きすぎた社会的制裁が問題点に
いじめ暴露動画の拡散は「抑止に繋がる」と好意的な意見もある一方で、加害者への行きすぎた社会的制裁が問題点になっている。過去、旭川のいじめ問題を積極的に取り上げたことで知られるみずにゃん氏は次のように指摘する。「いじめ動画は最近になって突然生まれたものではなく、もともと昔から投稿されてきたジャンルです。義憤に駆られ、正義感から発信する人もいますが、収益を目的としたアカウントも少なくありません。Xでは、バズっている投稿にコメントするだけでも、そのコメント自体のインプレッションが伸びる。話題の投稿に群がって数字を稼ぐ行為を“インプレゾンビ”と呼びますが、収益条件を満たすために、そうした行動を取る人が増えているのです」
背景にあるのがXの収益分配制度だ。プレミアムに加入したうえで、過去3か月間のオーガニックインプレッションが500万回以上、プレミアムフォロワーが500人以上などの条件を満たすと、投稿の表示回数に応じて収益を得られる仕組みになっている。
さらに、YouTubeやTwitchのサブスクリプションへ誘導するために、いじめ動画を投稿・拡散するケースや、投げ銭機能を備えた匿名質問箱サービス「mond」などを利用して、告発を“コンテンツ化”する動きも散見される。
◆いじめ暴露動画は「効率よく数字を稼げる素材」?

「普段は政治系の投稿が中心ですが、その時々でバズっているネタには基本全乗りします。いじめ暴露以外にも、フェミネタやLGBTQネタなどがバズりやすい。いいタイミングで乗っかれば、あっという間にインプレッションが数万、数十万になる。特にXは過激なポストがバズりやすいので、残虐な暴行シーンに『いじめ反対』『加害者に罰を』というコメントをつけて投稿します。簡単にインプレッションを稼げるネタなんですよ」

「トレンドを追って投稿内容を次々と変えるアカウントは要注意です。半年前は排外主義やクルド人批判をしていたのに、今はいじめ動画にシフトしているなど、話題を渡り歩きながら数字を稼ぐ共通の傾向が見られるはずです」(みずにゃん氏)
そのうえで、ユーザー側のリテラシーの重要性を強調する。
「僕が旭川のいじめ事件を扱う際には、裏を取るために旭川市議会議員にまで取材しました。しかし、個人がタレコミを完全に検証するのには限界があります。例えば、本当はいじめられている側なのに、切り取り方次第で“加害者”に見せるフェイク動画を作ることも可能です。そうした動画が影響力のあるアカウントから拡散されれば、被害者がさらに追い込まれる危険性もあります。正義感から拡散に協力したい気持ちはわかりますが、一度冷静になって情報を取り扱いましょう。」(同)
まず何よりも安易に“私刑行為”に加担しないことが重要だ。
取材・文/SPA! いじめ問題取材班
―[[いじめ暴露動画]急増の裏側]―

