中野サンプラザ白紙化、新宿駅前も未定に。東京の大規模再開発が“決まらない”異常事態のナゾ

中野サンプラザ白紙化、新宿駅前も未定に。東京の大規模再開発が“決まらない”異常事態のナゾ

◆中野サンプラザ跡地の再開発が白紙化

 建設費高騰のあおりで施工を担当する建設会社が見つからず開発が中止・見送りになるケースは全国で相次いでいる。

 昨年大きなニュースとなったのが、中野サンプラザ跡地の再開発の白紙化だ。東京・中野区は老朽化した中野サンプラザを解体し、その跡地を含むJR中野駅新北口駅前エリアの拠点施設を整備する「NAKANOサンプラザシティ計画」を進めており、収容人員最大7000人の大ホールやホテルを含む棟、オフィスやマンション、商業施設を含む地上61階の高層ビルで構成される施設を建設する予定であった。

 中野区は事業費を当初、1810億円と見込んでいたが、事業者グループの代表事業者である野村不動産は24年1月、区に対し約2639億円に増えるとの見積を提示。さらに同年9月には3500億円を超えるとの見積を提示。当初見込みの実に約2倍に膨れ上がったことを受け、中野区は25年6月、計画を白紙にすることを決めた。中野区によれば、今後の再開発計画については「未定」だという。

 建物の設計・施工を担う清水建設の見積もりが引き上げられたことが原因とされるが、白紙化の要因はなんなのか。野村不動産ホールディングスは取材に対し「すでに基本協定が解除されておりますため、お答えする立場にございません」とするが、前出・牧野氏はいう。

「発注者とディベロッパーの間で締結された基本協定が、諸事情で解除になるというケースは、まれに起こることではあります。あくまで推察となりますが、正式な請負契約締結前に清水建設は工事期間中の建築費も考慮するかたちで、複数回にわたり見積金額を上方修正して提示し、中野区側の見込みを大きく上回ったため、双方ともに請負契約は締結できないとの判断に至ったのではないでしょうか。かつて日本が経験したことがないレベルの建設費の急騰が起きており、今後もしばらくは続いていくと予想される状況下においては、事業者側か中野区側のどちらに責任があるのかという話ではなく、やむを得ない結果だといえるでしょう」

◆崩れるディベロッパーと建設会社の一枚岩

 
 このほか、名古屋鉄道が計8880億円を投じて進めている名古屋駅前の再開発では、25年12月、名鉄百貨店などが入るビルを解体して米高級ホテル「アンダーズ」などが入居する複合ビルを建設する計画の保留が発表。東京都の練馬区では区立美術館、目黒区では区民センターの再整備の計画が、事業費が当初見込みを大幅に上回ることを理由として中止になっている。

 こうした事態を受け、これまで一枚岩とみられたディベロッパーと建設会社の間にも不協和音が漂いつつある。大手ディベロッパーなどで構成される不動産協会は25年11月、建設会社などで構成される日本建設業連合会に異例の申し入れを実施。不動産協会は「建設業界や政府が公表するコスト上昇率と、会員企業が元請けから受領した見積価格の上昇率に大幅な乖離(かいり)が見受けられる」と指摘し、建設会社から提示される見積金額が「発注者には実態が極めて分かりづらい」と苦言を呈した。

 ゼネコン社員はいう。

「国内の建設需要の高まりと建設コスト高騰が重なり、ようは建設会社とディベロッパーの力関係が逆転しつつあり、それにディベロッパー側が業を煮やしているという面もあるでしょう。建設会社側は大きな損失が出るとわかっていながら工事を引き受けることはできないので、いくらディベロッパーから文句を言われたところで、どうしようもありません」

 不動産開発の世界で広がる狂騒は、しばらく続きそうだ。

<TEXT/山田浩二、協力/牧野知弘/オラガ総研代表取締役>

【牧野知弘】
オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。

【山田浩二】
飲食チェーンや学習塾、小売り企業を経てIT企業でシステム開発業務に従事。現在はフリーのライターとして主に企業・ITなどのジャンルに関する取材・記事執筆を行っている。
配信元: 日刊SPA!

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