
大切な資産を未来にわたって守り育てるには、「現金」だけでなく、バランスの取れたポートフォリオを形成することが重要です。本記事では、 LIFE Group の著書『相続家族会議のすすめ: 安心と信頼の遺産相続は「事前準備」が10割』(時事通信社)から、資産を現金だけで保有するリスクとデメリットについて解説します。
「資産は現金で持つのが一番安全」の落とし穴
相続や資産管理を考える際、「資産は現金で持つのが一番安全」と感じる方は少なくありません。確かに現金は流動性が高く、すぐに使えるという大きな利点があります。相続税や諸費用の支払いにも即応でき、値動きによる損失リスクもありません。しかし、資産を現金だけで保有し続けることには、見過ごせないデメリットやリスクが存在します。
第一のリスクは「インフレによる実質的な価値の目減り」です。現金は額面こそ変わりませんが、物価が上昇すれば購買力は低下します。例えば、今100万円で購入できる商品やサービスが、10年後には120万円必要になるとすれば、現金をそのまま持っているだけで価値は約17%減ったことになります。近年は世界的に物価上昇傾向が続き、日本でもエネルギーや食料品の価格が上がり続けています。資産を現金のみに依存していると、こうしたインフレの影響を直接受けてしまいます。
第二のリスクは「資産の成長機会を逃す」ことです。現金は安全ではありますが、増えることはありません。銀行預金の金利は上昇傾向ではありますが、広島県内の銀行の金利は0.2%程度。1,000万円を預けても年間利息は2万円程度です。これでは、物価上昇に追い付くことすらできません。一方で、不動産や株式、債券などの運用資産は、適切な管理や分散投資を行えば、長期的に銀行預金を上回るリターンを得られる可能性があります。現預金だけに偏ることは、安全と引き換えに成長の機会を放棄する選択ともいえます。
第三のリスクは「資産承継の効率の悪さ」です。相続税は、現金も不動産も同じように課税対象になりますが、不動産の場合、評価額が市場価格より低くなることがあり、結果的に相続税負担が軽くなるケースがあります。現金は額面がそのまま評価額になるため、節税の余地がありません。こうした観点からも、現金だけに資産を集中させるのは得策とはいえません。
さらに、現金は心理的にも「使いやすい資産」です。大きな買い物や不要不急の出費に流用されやすく、計画的な資産承継を妨げる要因にもなります。一方、不動産や長期投資資産は換金に時間がかかるため、衝動的な支出を抑える効果もあります。このように「使いやすさ」は、場合によっては資産の目減りを早めるリスクにもなり得ます。
「現金=安全」という思い込みは相続時のリスクに
もちろん、現金の重要性を否定するわけではありません。緊急時の備えや短期的な支出に対応するため、一定割合の現金は不可欠です。特に相続税や葬儀費用、各種手続きにかかる資金は、現金で準備しておく必要があります。
しかし、その割合は全資産の一部にとどめ、残りは不動産や金融商品、事業資産など複数の形態で分散することが、資産全体の安定性と成長性を高める鍵となります。
資産の形を多様化することで、インフレや市場変動への耐性を強められます。例えば、不動産は賃料収入も見込める上にインフレに強く、株式やREITは経済成長の恩恵を享受できます。債券は安定した利息収入をもたらし、現金は即時の支払い能力を確保します。こうしたバランスの取れたポートフォリオこそが、将来にわたって資産を守り活かすための基盤になります。
「現金=安全」という思い込みは、相続や資産承継の計画を狭めてしまう危険があります。現金はあくまで資産の一部であり、全体の中での役割を明確にすることが大切です。
相続を機に、資産を現金だけでなく、多様な形で保有・活用する戦略を立てることが、次世代への賢い資産引き継ぎにつながります。
LIFE Group
