◆エキストラの仕事では「伏線に見えるから後ろに下がって」

小学校1年生の時の学芸会です。オーディションに受かり、主役に選ばれました。その時に、“違う誰かになれる”ことの楽しさを知りました。テレビドラマや映画を観るのが好きで、「自分もあの世界に行ってみたいな」と思うようになりました。
でも、中学生になると、“私には無理だろうな”と思うようになってしまって。障がいがある人がテレビに出てるのを見たことがなかったし、自分も“観る側”でいよう、ってどこかで線を引いていました。
——いつから、再び目指すようになったのですか。
大学生1年生の時です。友達に誘われて、学園ものの映画のエキストラに参加しました。制服を着て歩いたり、学生役でワイワイしてるのが楽しくて、「やっぱりこういう世界に行きたいな」と思うようになったんです。
それから何度か撮影に行くようになりましたが、現場で助監督さんに 「手が映りすぎると“何かの伏線”に見えちゃうから、後ろに下がってもらっていい?」と言われてしまうことが増えてきてしまって。「役がない」っていうより、「存在を前提とされてない」って、思い知らされました。
後ろにまわされるうちに、「私は映っちゃいけないんだな」って気持ちになっていきました。だからエキストラで出れるだけでいい、と言い聞かせていました。
——その後、転機はありましたか。
Xでたまたま見かけた2021年度の「障がい者モデルオーディション」に応募して、グランプリをいただいたことです。自分の写真を撮ってもらったり、ファッションブランドの障がい者向けファッションのアドバイスをしたり、1年間ほど活動しました。今は事務所を卒業して、個人で演技指導やオーディションのレッスンを受けています。
◆恋愛は「手のことをいつ伝えるか悩む」アプリで怖い思いも

初めてお付き合いしたのは大学1年生の頃で、同じバイト先の人でした。友達の延長みたいな感じで付き合い始めました。 指の話とかはしないままで、特に何かを変に意識されることもなかったです。
——“付き合う”ことへのハードルはありましたか?
女子校出身で、男子と話す機会があまりなかったんです。高校は共学だったんですけど、男子と全然喋ってなくて。女子とワイワイしてる方が楽しかったし、男性とどう接していいかわからなくて。マッチング アプリを大学生の時にやってみたんですけど、初めて待ち合わせ場所に行ったら、おじさんが立っていました。
相手は「大学生です」って言ってたのに全然違ってて。怖くなって、すぐに帰りました。大学の写真とかも送ってきて、すごく作り込まれていました。
——その時、手のことは伝えていたんですか?
はい、会う前にメッセージで伝えました。「全然いいよ」って言ってくれてたんですけど、実際に会ったら「私の勇気、返してほしい」って思いました。あの経験がトラウマで、もうアプリはやっていません。今でも、「手のことを、どのタイミングで伝えるか」は悩みのひとつですね。

