
長生きすればするほど、相続税の負担は年々膨らんでいく、そんな収益物件オーナーの悩みを解決するのが、土地は手元に残して収益物件の「建物のみ」を贈与する手法です。本記事では、 LIFE Group の著書『相続家族会議のすすめ: 安心と信頼の遺産相続は「事前準備」が10割』(時事通信社)から、家賃収入をスムーズに次世代へ移し、将来の共有トラブルを未然に防いだ成功事例を解説します。
建物の生前贈与で家賃収入を子や孫へ
相続対策として、生前贈与はよく耳にする方法ですが、その中でも収益物件の贈与は、資産承継と収入移転を同時に実現できる有効な手段です。ここで紹介するのは、賃貸アパートを所有するオーナーが、生前に建物を子や孫へ贈与し、家賃収入を直接彼らに渡す仕組みを整えた事例です。
このオーナーは、自分が元気なうちに承継を進めたいという強い意思を持っていました。相続発生後に収益物件の分割でもめた場合、共有状態になり管理が煩雑になることや、売却の合意形成が難しくなるリスクを理解していたからです。また、遺留分請求や相続税納税資金の問題も考慮し、複数の専門家と相談を重ねました。
贈与に当たっては、まず土地と建物を分けて評価し、建物部分のみを贈与。土地は引き続きオーナーが所有します。これは、贈与税評価額を抑えつつ、家賃収入の受取権限だけを移すための工夫です。
贈与に当たっては、贈与税の非課税枠や暦年課税制度だけでなく、相続時精算課税制度の活用も検討しました。特に建物評価額が下がっているケースでは、この制度を使うことで贈与時の税負担を抑えつつ、将来的に相続税で精算できるため有効です。
ただし、建物に抵当権が設定されている場合には、贈与を実行するために抵当権者(金融機関など)の同意が必要となります。そのため、事前に金融機関と調整を行い、贈与の実現可能性を確認することが欠かせません。
このように制度の選択肢を柔軟に組み合わせ、複数年にわたり段階的に贈与を実施することで、一度に大きな税負担を負うことなく、安定的に資産と収益を承継させる仕組みを構築しました。
生前贈与で財産の価値を最大限に引き出す戦略
家賃収入を子や孫が直接受け取るように変更を行った結果、贈与直後から彼らの生活基盤が安定しました。特に孫世代にとっては、学費や住宅取得資金など、人生の節目での支えとなります。また、贈与時に賃貸借契約書や管理契約書も更新し、将来的な運営トラブルを回避しました。
この事例から学べるポイントは三つあります。
一つ目は、相続発生前に共有や分割のリスクを減らすこと。収益物件の共有は絶対に避けなければなりません。
二つ目は、贈与税・相続税の両方を意識した設計。税負担を分散しながら計画的に移転することが肝心です。特に高齢になると、大きな支出が減る一方で家賃収入が積み上がり、金融資産としての相続財産が年々膨らんでいく傾向があります。長生きすればするほど相続税の負担が増していくという悩ましい問題に直面しがちですが、生前贈与の仕組みを取り入れることで、資産と収益を早い段階から分散し、将来の税負担を和らげる効果が期待できます。
三つ目は、贈与後の運営体制まで整備すること。家賃の受取先変更や契約関係の見直しは、事前に必ず行っておくべきです。
生前贈与は「財産を減らす」行為ではなく、「次世代に活かす資産の形を整える」戦略です。特に収益物件を持つ方は、早い段階での実行が、家族間の争いを防ぎ、財産の価値を最大限に引き出すことにつながります。
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