勤務中にテレビ・スマホ・盗み食い “防犯カメラ”が記録も、非を認めず逆ギレ…「懲戒解雇」有効? 裁判所の判断は

勤務中にテレビ・スマホ・盗み食い “防犯カメラ”が記録も、非を認めず逆ギレ…「懲戒解雇」有効? 裁判所の判断は

勤務時間に「テレビを見る」「スマホを見る」「盗み食いする」などの問題行動を起こした社員が解雇された。

この社員は「証拠があるのですか」などと強弁したが、会社はカメラの映像などを根拠に懲戒解雇。納得できない社員はその後、提訴したが、裁判所は「懲戒解雇は有効である」と判断した。

以下、事件の詳細について、実際の裁判例をもとに紹介する。(弁護士・林 孝匡)

事件の経緯

障がい者支援事業を行う会社において、支援員であるAさんは約10年にわたりグループホームでの業務に従事してきた。

その職務は、5名の利用者が居住するホーム(一軒家)内で生活を共にしながら、食事や入浴、排せつの介助、見守りといった日常生活全般を多角的にサポートするというもの。勤務時間中は、利用者の生活リズムに合わせた柔軟な対応が求められる役割を担っていた。

■ 問題行動
Aさんは勤務時間中、フリーWi-Fiを利用するために近隣のコンビニで私用のPCを操作したり、業務中にテレビを視聴したりしており、こうした振る舞いは他の職員の間でも問題視されていた。

これを受けて会社が職員へのヒアリングを実施したところ、前述の行為以外にも「勤務中の洗車」「DVDの視聴」「私的なPC利用」といった怠業行為に加え、「利用者の食事を床に置く」という不適切な対応が常態化していたことが判明。さらに、Aさんの勤務日に限ってホーム内の食材が頻繁に紛失することから、私的流用の疑いも浮上した。

会社がこれらの事実について本人へ確認を行った際、Aさんは「証拠はあるのか」と強い口調で反論に終始した。その後、労働条件の改善を求めたAさんが労働組合へ加入し、団体交渉の場が設けられたが、そこでも会社側の指摘に対し「客観的な証拠がない」と主張。特に食材紛失の疑いについては、犯人扱いされたとして強い憤りをあらわにした。

■ 自宅待機命令
会社がグループホーム内の防犯カメラを確認したところ、Aさんによる勤務中のテレビ視聴やスマートフォンの操作に加え、利用者向けの食材を手づかみで食べる、私物のバッグに入れて持ち出すといった不適切な行為が記録されていた。

これを受け、会社は事実関係の精査と本人への弁明機会の確保を目的として、Aさんに自宅待機命令を下した。その後、改めて弁明の場を設けたが、会社は一連の行為が懲戒解雇に相当すると判断。なお、この際「自己都合退職に応じるのであれば懲戒解雇を回避する」という選択肢も提示したが、Aさんがこれに応じなかったため、最終的に懲戒解雇を決定した。

この処分に納得できないAさんは「解雇は無効である」と主張し、提訴した。

裁判所の判断

Aさんの敗訴である。裁判所は「懲戒解雇は有効」と判断した。

事実認定においては、既述の事項に加え、勤務時間中の電気シェーバーを用いた除毛、室内でのウォーキングといった怠業行為が認められた。また、利用者向けの食材についても、炊飯器からしゃもじでご飯をとってそのまま口に入れる、パスタを手づかみで食べる、さらにはお菓子の試食・持ち出しといった、支援員としてあるまじき行為が詳細に認定されている。

Aさんはこれらに対し「パスタなどの食事については試食だった」などの反論を展開したが、裁判所は「試食として不適切という話ではなく自分の食事として食べたと理解する方が自然」と断じ、お菓子の試食に関しても「その必要性自体、理解に苦しむ」として、一連の主張を退けた。

さらに裁判所は、Aさんの態度についても重く見ている。団体交渉の場においてテレビ視聴の事実を明確に否定するなどの虚偽説明を行い、防犯カメラの映像で事実が露呈した後も不合理な弁解に終始した点が考慮された。

以上のことから、裁判所は「Aさんの基本的な姿勢は指導・教育による改善が期待し難く、短くない期間にわたって非違行為を継続してきたこと、この期に及んで反省をしていないことを踏まえると、懲戒解雇は妥当である」と結論付けた。

最後に

懲戒解雇となれば、退職金は原則として支給されず、その後の再就職においても大きな障害となり得る。今回のケースで解雇が有効と認められた背景としては、Aさんが不合理な弁解に終始し、反省の態度を見せなかったことも一つの大きな要因と考えられる。

もし不適切な行為をしてしまったのであれば、速やかに非を認めて謝罪し、行動を改善することが何よりも肝要だ。

配信元: 弁護士JP

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