アクアリウムと聞くと、単に魚を飼うもの、というイメージが強いかもしれません。しかし私が長年取り組んでいるのは、水の中で植物を育て、美しい景観を作り上げる「水草水槽」と呼ばれる水中園芸です。

ガラスの水槽の中で水草が育ち、光合成を行う。その過程で生まれた酸素によって魚が活動し、魚のフンはバクテリアによって分解され、再び水草の養分となります。こうして水槽内に、小さな生態系が形づくられ、澄みきった美しい水が保たれるのです。

とりわけ、透明な水の中で行われる光合成の光景は感動的です。葉から気泡がプクプクと立ち上る、「できたての酸素」を目にする体験。さまざまな種類の水草を植え、石や流木を組み上げる作業は、まさにガラスの中のガーデニングです。水中なので虫が寄ってくることもなく、水やりも必要ありません。行うのは、定期的な換水と二酸化炭素の添加だけです。
「二酸化炭素?」
水槽といえば、ブクブクと酸素を入れるイメージがあるかもしれませんが、植物を育てる水草水槽では二酸化炭素を添加します。魚が窒息する心配はありません。先ほど述べたとおり、元気に育つ水草は光合成によって水中に酸素を放出してくれるからです。

赤や緑の葉、個性的な模様。水流に揺れる柔らかな動きと、その間を縫うように泳ぐ宝石のような魚たち。うっとりと見惚れていると、ここが部屋の中であることを忘れてしまいます。没頭しすぎて抜け出せなくなるほどの、凄まじい中毒性があります。
実は、水草水槽には世界規模のコンテストまで存在します。

私が長年挑戦してきた「世界水草レイアウトコンテスト」。ありがたいことに、この作品で世界ランキング3位という評価をいただきました。これは実績を誇りたいという話ではありません。気づけば、世界の頂点を競う場所に立ってしまうほど、この世界に深く引き込まれていた、というだけのことです。
これはいわゆる盆栽を嗜む老人の心境に近いのでしょうか。「まさか自分が」と思っていた枯淡の境地に、いつの間にか片足を踏み入れていたとは。
透明な水の中に広がる、鮮やかな緑の森。ピンセットで一本一本水草を植え、石の角度をミリ単位で調整する時間。そこには言葉も思考も入り込む余地はありません。ただ純粋に、美しさと溶け合う感覚が満ちているだけです。
世界コンテストという厳しい舞台ではありますが、私にとって水槽と向き合う時間は、かけがえのない至福のひととき。この真剣な「水遊び」は生活の一部となり、慌ただしい日々を支える不可欠な「深呼吸」となっています。
edit : Sayuri Otobe
andpremium.jp/column/eyes
漫画家 タナカカツキ

著書に『オッス!トン子ちゃん』(扶桑社)、『サ道』(講談社)など。カプセルトイ「コップのフチ子」の企画原案も手がける。水草水槽の入門書『水草水槽のせかい すばらしきインドア大自然』(リトル・モア)も。

