小規模事業所が多い分野ならではの課題
医療・福祉分野の従事者が育休を取りづらいと感じる背景の一つには、事業所の規模が関係している可能性があります。
まず、育休制度に関する全産業の調査結果を見ていきます。厚生労働省が2025年に公表したデータによると、育休制度を規定している事業所の割合は、規模が大きくなるにつれて高くなる傾向が見られます。

次に医療・福祉分野に目を向けてみます。統計局の「経済センサス(2021年)」によると、医療・福祉業界では19人以下の小規模事業所が全体の約80%を占めていることがわかりました。
この点について山口教授は次のように話します。
「代替要員の確保や業務分担が困難などの理由から、小規模である点は産業問わず不利といわざるをえません。ただ、日本は他国に類を見ないスピードで少子高齢化が進んでいますので、制度が整っていないことで、人が集まりづらくなる悪循環を招きかねません」
「お互いさま」を精神論で終わらせないために
小規模や抜けにくいという構造的な課題もある医療・福祉分野では、「お互いさま」の組織づくりが大切と山口教授は話します。
「個人の善意や自己犠牲によらない体制づくりが必要です。そのためには、特定の人への業務依存度をなくす、同業の医療機関や福祉施設と普段から連携を図ることが有効です。
加えて、女性だけでなく男性の育休取得の推進も欠かせません。国がおこなった調査によると男性育休によって、従業員の満足度や職場風土、ワークエンゲージメントの向上があることが立証されています」


