皮膚疾患の共同研究をめぐり、東京大学大学院で医学系研究科教授の佐藤伸一容疑者(62)が、研究相手の業者から高級クラブや性風俗店での接待を繰り返し受け、収賄容疑で逮捕・送検されたのだ。
捜査関係者によると、接待は月2回のペースで約30回。1日あたりの接待費が85万円に上るケースもあり、累計額は900万円近くに達する可能性があるという。しかも接待先は、高級飲食店にとどまらず、東京・吉原のソープランドまで指定されていたとされる。
「共同研究」「社会連携講座」という名目の裏で、何が行われていたのか。
産学連携が当たり前となった今、「研究」と「癒着」の境界線はどこに引かれるべきなのか。
この事件を、刑事責任の観点から読み解いていく。

◆「東大教授は“公務員”」収賄罪が真正面から成立する理由
今回の事件で逮捕された東大教授は、刑法上どのような罪に問われる可能性があるのか。アディーレ法律事務所の南澤毅吾弁護士は「収賄罪に関しては、刑法上、『公務員性』『職務関連性』『対価性』という3要件が定められています」と解説する。国立大学法人に所属する大学教授は、刑法上の「公務員」に該当するとされる。一方、私立大学の教授は「公務員」ではないため、収賄罪は問題になり得ないという。同じ「大学教授」でも、所属が国立か私立かで、刑事責任が決定的に変わる。この違いは一般にはあまり知られていないが、今回の事件では、その“見えにくい線”が、教授の運命を大きく左右することになる。
次に「職務関連性」だが、今回のケースでは、接待を受けた教授が「社会連携講座の設置・運営」や「共同研究の受け入れ」「研究上の便宜供与」に関して、職務権限またはその影響力を持っていたかが問題となるが、「今回逮捕された教授は『皮膚科長』にあり、十分な職務権限を持っていたことは明らかです」と南澤弁護士は指摘する。
最後の「対価性」に関しては、「便宜を図ってもらう見返り」であったかどうかがポイントになるという。
「懇親会・軽食レベルの安価な接待であれば、社交辞令の範囲内として、対価性がないという評価になりますが、少なくとも累計900万円相当とも報じられている接待額からすれば、対価性を否定することは困難でしょう」
◆高級クラブから吉原ソープへ…“研究接待”の名を借りた欲望の暴走
今回の事件では、高級クラブだけでなく風俗店での接待も問題となっている。こうした接待内容の違いは、刑事責任に影響するのだろうか。「刑法上、収賄罪が成立するかどうかは、金銭かサービスか、あるいは接待内容の種類そのものによって形式的に区別されるわけではありません。飲食接待であっても、性風俗店での接待であっても、収賄罪の要件を満たす限りでは、『財産上の利益』に該当します」
ただし、量刑判断や悪質性の評価においては、接待内容の性質が考慮される可能性が高いという。
「性風俗店での接待については、私的・享楽的性格が極めて強く、職務との正当な関連性が説明しづらい点で、『単なる会食』よりも悪質と評価される余地があります」
国立大学は税金によって支えられている公共機関だ。その教授が、研究の名のもとに性風俗店で接待を受けていたとすれば、それは「個人の嗜好」の問題にとどまらず、税金の使途や大学の公共性そのものを揺るがす行為でもある。
特に今回の事案では、「吉原の風俗店」という世間的に「高級店」に該当するソープランドでの接待が行われていたことが報じられている。南澤弁護士は「多様な営業形態のある風俗の中でも、高級ソープランドというのは、特に最上級のサービスです。教授らの私欲がそれだけ大きかったことの証左でしょう。量刑が重く判断されるには十分な事情といえます」と指摘する。
さらに、「テクニシャンを希望」など、教授側がかなり主体的に風俗を楽しんでいたという報道もあり、こういった点も、倫理観が欠如しているとして、刑事責任を重くする要素となるとのことだ。

