
厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、日本では同居20年以上の「熟年離婚」が、統計のある1947年以降で過去最高を更新し続けているそうです。定年後の生活で「相手の本性」を知ってしまうこともその原因のひとつかもしれません。朝日新聞取材班による著書『ルポ 熟年離婚』(朝日新聞出版)より、定年退職後の夫に失望した70代専業主婦の事例を紹介します。
平穏無事に一生を終えると思っていたが
それは、40年以上の勤めを終えた夫が最後に出勤した日のこと。東京都に住む70代の主婦は、長年家族のために働いてくれたことに感謝の気持ちでいっぱいだった。
帰宅した夫を「ご苦労様でした」とねぎらった。夫の手には職場でもらったバラの花束があった。「奥さんもご苦労様でした」と贈られた花だという。
「『奥さんの好きな花は』と聞かれたけど、わからんと答えた」と夫。二人の娘は毎年、誕生日に大好きなユリの花を贈ってくれる。「娘にもらったの」と夫にも話していた。「好きな花ぐらい知っててよ」。がっかりしたのを覚えている。
とはいえ、退職後の暮らしを心配してはいなかった。ずっと一緒にやってきた。このまま、ともに、平穏無事に一生を終えると思っていた。
「でも、そうじゃなかった」
退職後の夫は…
5歳年上の夫とは20歳のころに職場で出会った。一緒にいるとなんとなく安心できる感じがして、1年後に結婚した。長女を出産後に退職し、専業主婦として次女、長男も含めて三人の子どもを育てた。
子どもたちと進学や就職を話し合うとき、夫は価値観を押しつけるようなことを口にし、話がずれていく。だから、夫には事後報告の形で伝えることが多かった。それでも、大きな波風は立たなかった。
夫は定年退職後、再雇用で3年働いた。予想より仕事が忙しく、「やめたい」と切り出されたとき、反対はしなかった。
退職後は、夫婦でお金をかけない旅をしたいね。道の駅などで車中泊をして、寒い季節は南へ、暑いときは北へ行って。何回かに分けて日本を一周できたら――。
夫に伝えると「行けたらいいね」と生返事ばかりが返ってきた。退職後、夫は1日中、大好きなテレビの前にいるようになった。
朝起きるとテレビ。外出から帰ると、まずはスイッチを入れる。ニュースにワイドショー、映画……。チャンネルを変えては見続けていた。
