「はじめてのおつかい」を観たアメリカ人のリアルな反応。「子供の単独行動」が“極端に制限”される理由

「はじめてのおつかい」を観たアメリカ人のリアルな反応。「子供の単独行動」が“極端に制限”される理由

◆「子供だけで遊ぶなんてもってのほかになった」NYの誘拐事件が全米に与えた影響

ニューヨーク・ソーホー(写真:Adobe Stock)
’79年5月25日朝、ニューヨークのソーホーで自宅からスクールバスの乗り場に向かって歩いていた6歳の男の子、イータン・パッツ君がこつ然と姿を消した。母親がイータン君をわずか1ブロック先の乗り場まで1人で歩かせた初めての日のことだった。

事件はニューヨークのみならず、全米を揺るがせた。イータン君の顔写真が牛乳パックに印刷されるなど、子供の行方不明事件に関心が集まった。その後、レーガン大統領によって5月25日が「行方不明児童の日」に定められ、児童保護のための非営利組織、全米行方不明・被搾取児童センターが設立された。

事件から33年がたった’12年4月に別の事件で服役中の男が、事件当日、イータン君と一緒にいたと証言したという情報があった。当時、現場周辺を取材するほか、数人の住人から話を聞く機会があった。

ソーホーといえば今でこそ、アートギャラリーや高級ブティック、トレンディなレストランが立ち並ぶニューヨークきってのファッショナブルな街だが、当時は周辺のビル群はほとんどが空き家で、板で出入口を覆った店舗があちらこちらにあった。石畳の通りには、盗難車の錆びついた残骸が散乱し、住民は路上でゴミを焼却していたという。イータン君と同い年だという男性がこう話していた。

「事件の前までは、夕方になっても子供たちだけで走り回っていたことを覚えている。暗くなってもお構いなしで遊んでいた。でもあの事件があってからは、ガラッと変わった。子供だけで遊ぶなんて、もってのほか。学校には必ず親父の自転車に乗せられて通うようになり、子供だけで歩く姿は街中でまったく見なくなった」

ソーホーの変化は全米に広がって、アメリカの子供たちの生活を一変させた。親の管理が「子育て」の支柱となり、伸び伸びと遊びたいはずの子供たちの「自由」を奪ってしまった。1つの事件がきっかけで社会は大きく変わる。日本もいつアメリカと同じようになるかはわからない。

証言した男はその後、殺人などの罪で有罪判決を受けたが’25年7月、控訴審が判決を破棄した。物証が乏しい上に、男には精神疾患と妄想の既往症があったため、証言に信ぴょう性がないとされた。イータン君は未だに見つかっていない。

【谷中太郎】
ニューヨークを拠点に活動するフリージャーナリスト。業界紙、地方紙、全国紙、テレビ、雑誌を渡り歩いたたたき上げ。専門は経済だが、事件・事故、政治、行政、スポーツ、文化芸能など守備範囲は幅広い。
配信元: 日刊SPA!

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