多様性への対応と現場の工夫
一方で、現場レベルではさまざまな工夫がなされている。
たとえば茨城県境町と五霞町ではハラール給食を用意する日を設けるなど、地域ごとの取り組みがある。
さらに東京都八王子市の小学校ではヴィーガン給食を実施し、アレルギーを持つ児童も含めて皆が同じ給食を食べられるよう配慮している。
これらは特定の宗教を優遇するのではなく、食の多様性を尊重し、包摂性を高める取り組みといえるだろう。
「同じ釜の飯」をともに食べることの意味
先に述べたとおり、日本の学校給食は、児童・生徒への栄養支援にとどまらず、食に関する教育を行う制度だ。
現場で行われている工夫は、食に対するさまざまな考え方があることを学ぶ教育的取り組みでもある。
しかし今回の北九州市の事例では、事実と異なる情報が拡散され、「外国人優遇」「乗っ取られる」といった意見が増幅した。
その結果、本来「学校給食法」の理念に基づいた現場の穏やかな工夫までもが誤解される恐れがある、ということが可視化された事例と言えるだろう。
「同じ釜の飯を食う」という言葉があるように、日本には同じ食事をともにすることで関係性を深める文化がある。
この独自の文化を、多様化する社会の中でどのように受け継ぎ、発展させていくのかが、われわれに問われているテーマだ。