
◆『探偵!ナイトスクープ』問題の経緯とは
改めて、件の番組内容と騒ぎが大きくなった経緯を振り返る。2026年1月23日放送のABCテレビ『探偵!ナイトスクープ』をきっかけに、番組内容をめぐる議論がSNSを中心に広がった。問題となったのは、「6人きょうだいの長男を代わって」という依頼で登場した小学6年生の男児。番組内では、長男が日常的に弟妹の世話や家事を担う様子が紹介され、視聴者から「過度な負担を強いられている」「ヤングケアラーにあたるのではないか」といった批判が相次いだ。
放送直後からSNSでは番組や家族への非難が拡散。これを受け、番組公式サイトは後日、「編集・構成上の演出が含まれていた」と説明し、実際の生活実態とは異なる部分があると注意を呼びかけた。しかし、この説明が「やらせを認めたのではないか」と受け止められ、批判は収束するどころか、番組制作の姿勢そのものに向けられる形で再燃した。
一方で、依頼者である男児の将来を案じる声や、「家庭の事情を娯楽番組として消費してよかったのか」といったメディア倫理を問う意見も噴出。番組に出演した霜降り明星・せいやの「まだ大人になるなよ」という言葉は共感を集める一方、その意味をめぐっても議論が広がった。
今回の騒動は、テレビ番組の演出の是非にとどまらず、ヤングケアラー問題、そして日本社会が家族のケアをどこまで「家庭」に委ねているのかという、より根深い課題を浮かび上がらせているが、作家の乙武洋匡氏は「番組の是非を超えて、この騒動が日本社会の“家庭への過剰な依存”を浮き彫りにしたと指摘する」(以下、乙武氏による寄稿)。
◆霜降りせいや「まだ大人になるなよ」に感じた違和感
『探偵! ナイトスクープ』に「6人兄妹の長男を代わって」という小学6年生の依頼者が登場。霜降り明星のせいやさんがご家族を訪ね、日頃から長男が弟妹5人の世話や家事など過酷な負担を強いられている様子が伝えられると、「育児放棄だ」「ヤングケアラーになっている」と非難が殺到した。番組側は「編集・構成上の演出」があったことを認めている。その前提のもと、一般的にヤングケアラーは勉強時間や睡眠時間の減少、心身の疲労による健康障害などさまざまな課題が指摘されており、当事者への支援は必要不可欠と言われている。せいやさんが番組で口にした、そして放送後にもSNSに書き込んだ「まだ大人になるなよ」という言葉には、多くの共感が寄せられた。今回の依頼者である小6の長男くんが過度な負担から解放されることには私も賛成だし、せいやさんが子ども思いの血の通った人物であることにも心温まった。だが、「まだ大人になるなよ」という言葉には、もう少し丁寧に向き合いたいと思っている。
もちろん、せいやさんにそんな意図がないことは百も承知だが、それでもこの言葉を聞いた私は、「大人になったら過度なケアも受け入れなければいけないのだろうか」と疑問を抱いてしまった。ずいぶんひねくれ者だと思われるかもしれないが、それは日頃から「この国は育児や介護を『家庭』に依存しすぎではないだろうか」という問題意識を抱いているためだと、ご容赦いただきたい。

