年を重ねるごとに突然起きる、転倒、骨折、病気――「いつまで自宅で、一人で暮らせるだろう?」と不安を感じたことはありませんか?社会学者・上野千鶴子さんは、ここ数年で腰椎圧迫骨折と乳がんの経験を経て今、自分らしい最期への備えを始めています。
上野千鶴子(うえの・ちづこ)さんのプロフィール
1948(昭和23)年富山県生まれ。社会学者、東京大学名誉教授、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。女性学、ジェンダー、介護など幅広い分野で活躍。著者に『おひとりさまの老後』(法研刊/文春文庫)、『こんな世の中に誰がした?』(光文社刊)、『八ヶ岳南麓から』(山と溪谷社刊)
「在宅おひとりさまで最期まで機嫌よく」を予行演習

私が初の転倒事故を起こしたのは2022年の秋。コロナ禍で引きこもり生活が続き、久しぶりの講演に出掛けた先でのことでした。
新幹線の上りエスカレーターで、引っ張っていたキャリーバッグの重みでバランスを崩し、そのまんま真後ろへひっくり返ったんです。頭を下にしてあおむけのまま、激痛でまったく動けない私を乗せ、エスカレーターはぐんぐん上昇していく。この先にギロチン台が待っているのかと思っていたら、見知らぬ男性が両足を持って引っ張り出してくれました。
すぐに駅員さんも飛んできて車いすに乗せられ、 迎えに来てくれた方の手配で整形外科を受診。レントゲンを撮り、腰椎圧迫骨折とわかりました。ギリギリとコルセットを巻かれ、お尻にブチッと鎮痛剤を入れられて、そのまま講演会場へ。
車いすでの登場に聴衆のみなさんはびっくりされていましたが、「おひとりさまの老後」がテーマでしたから「今日は演題にふさわしい格好で参りました。みなさんもいずれこうなります」とあいさつして(笑)。なんとか講演を終えました。

