◆期待に胸を膨らませて銀行員デビューも、1年半で二度目の「損切り」
就職活動の軸は、「お金持ちになりたい」という極めてシンプルなもの。富裕層ビジネスを一番近くで学べる信託銀行こそが、お金持ちへの最短ルートに違いない。そこでノウハウを吸収すれば、おのずと富を築けるはず――。そんな期待と確信を胸に、三井住友信託銀行への入行を決める。そこで武藤さんは、投資家としての第一歩を踏み出す。「新卒1年目、私が最初に取り組んだのは会社の自社株積立制度でした。月2万5000円の投資に会社が8%の補助を出してくれる。つまり、実質月利8%のようなものでした。利益は月2000円程度と微々たるものですが、ノーリスクで月利8%を上回る投資先など市場には存在しません。複利の力を味方につければ、この一歩がいずれ大きな資産になる。そのためにも、投資を早く始めることが大切だと自分に言い聞かせ、制度をフル活用していきました」
銀行員とはいえ、若手の年収は300万円弱。生活は苦しかった。それでも、仕事で向き合うのは巨万の富を築いたオーナーたちだ。彼らが動かす資産の規模や、決断のスピード感は別次元で、武藤さんにとって大きな刺激になった。ただその一方、毎日同じフロアで働く上司たちの姿はあまりに対照的だった。40代後半になっても数字に追われ、部下には必要以上の叱責を加え、ストレスですり減っている。
「仕事は楽しいけど、組織に所属している限り野球部時代と同じ理不尽からは逃れられない。これが、定年まであと40年近くも続くのか……」
疲弊する上司の姿に自身の未来を投影した武藤さんは、入行からわずか1年半で銀行を去る決断を下す。組織に時間を売るのではなく、投資家として自立する道を選んだのだ。「とにかく3年間がむしゃらにやって、それで無理なら一から出直そう」。そう覚悟を決め、24歳で安定した地位を捨てた。
◆日給8000円のゴルフ場キャディを経て始めた「就活塾」
独立後は日給8000円のゴルフ場キャディとして食いつなぎ、冬場は月収8万円まで落ち込む極貧生活。それでも生活を切り詰めながら、金利18%のキャッシングを利用してまで投資塾や起業塾に通い、勉強を続ける日々を送った。そうして培った知見を武器に、まずは投資の種銭を作るべく、株式会社VisionCreatorを立ち上げる。そこで、自らの経験を活かした「就活塾」を始めた。「資産形成の最短ルートは、小手先のテクニックではなく、『労働で種銭をつくり、投資で増やす』という両輪を回し続けることです。起業後、コツコツと貯めた軍資金で米国株を購入し、得られる配当もすべて再投資に回しました。10億円を超える現在の資産も、始まりは1株77ドル(当時のレートで1万円弱)の買い付けからです。ランチは500円、服はユニクロ。キャディで必要最低限の生活費だけを稼ぎ、就活塾などの事業で得た利益は、そのほとんどを投資に充てる生活を徹底したんです」
武藤さんの投資の真髄は、ひとえに「時間を味方につけること」にある。
「大切なのは『時給思考』です。毎日チャートにかじりついて年間10万円しか稼げなければ、時給は数十円程度。それならバイトをしたほうがマシです。私が選んだのは、10年以上持ち続けられる現物株を買い、あとは放置するという戦略。これなら『労働時間』をほぼゼロにできるので、実質的な時給を最大化できるんです。もちろん資金は余剰資金の範囲内。仮に毎年100万円を米国株などの年利7%で運用し続ければ、理論上30年で1億円を超える。これは特別な才能がなくても、誰にでも再現可能な数字なんです」
事業とバイト、節約、そして愚直な入金を繰り返した結果、独立から4年後の28歳で資産1億円を突破。資産10億円を超えた現在も生活レベルをむやみに上げることなく、「資産を最大化させる」という点において一切の妥協はない。かたい財布の紐を緩める際には、「その出費に価値があるかを判断軸とし、いかに自分の成長につながるかを大切にしている」という。そんな武藤さんが身銭を切って購入した数少ない高級品の一つが、「フェラーリ」だった。
「信頼するメンターから『高級車を買えば、ステージがワンランク上がる』という助言を受け、フェラーリを購入しました。一見、成金の道楽のように思われるかもしれませんが、私にとっては明確な目的がありました。
それは、オーナー限定のイベントなどを通じて、普通に生きていたら出会えないような層との人脈を築くことです。実際、そこで出会った成功者の方々は驚くほど謙虚で、彼らがどう富を築いてきたかという『お金持ちの思考』を直接学ぶことができました。私にとってフェラーリは単なる車ではなく、一流の環境へ身を置くための貴重な『投資』だったんです」

