◆残された5億円と、最期の言葉
林さんは80歳で亡くなりました。資産は、ほとんど減っていませんでした。帳簿上では、最期まで5億円近くが残っていたと聞いています。
そのお金は、ほとんど使われることがありませんでした。旅行にも、趣味にも、人との時間にも。守るために存在していたようなお金です。
亡くなる少し前、林さんはぽつりとこう漏らしたそうです。
「怖がりすぎたな」
その一言が、すべてを物語っています。
残ったのは5億円ではありません。使うことができなかった人生、そのものだったのだと思います。
◆お金を守りすぎた結果、失ってしまったもの
林さんの人生において、お金を増やすことが間違いだったとは思いません。問題だったのは、お金を失うことを恐れ、守ることだけに意識が向き、使うという選択肢が消えてしまったことです。結果として、失ったものはお金ではありません。取り戻せない時間や、本当なら味わえたはずの経験でした。
お金は残せても、人生は残せない。
では、今あなたが大切に守っているそのお金は、何のためのものなのでしょうか。
<文/渡辺智>
【渡辺智】
某メガバンクに11年勤務。リテール営業やプライベートバンカー業務を経験。その後、外資系保険会社で営業。現在は金融ライターとして独立。FP1級保有。難しい「お金の話」をわかりやすく説明することをモットーにしています。公式SNS(X)は、@watanabesatosi7

