◆非行に走った背景は…

「中学3年生のころ、僕はいわゆる非行少年でした。養父からは『私立高校に行かせてあげられるお金はない』とあらかじめ言われていましたが、先ほどお話した僕の学力では、公立高校への進学は無理でした。受験はしましたが、当然結果は不合格。ただ、実は一校だけ、私立高校を受験して合格していたんです。けれども日頃の生活態度が悪いこともあり、また授業料も支払えないということで、結局進学はできませんでした」
そのまま非行に突き進んだ叶斗さんは、警察や弁護士の世話になるほどの事件を数件起こしてしまう。最初の方こそ気持ちに寄り添ってくれていた両親も、まるで更生に向かわない叶斗さんの姿をみて、徐々に困惑の色を強めた。当時の気持ちを、叶斗さんはこう語った。
「家庭や学校という、身近な社会に対して、常にわだかまりを持っていましたよね。たとえば、学校では友だちと一緒に悪さをしても、自分だけ厳しく怒られるなぁとか。家庭なら、父の事業が成功していくにつれて、経済状況も良くなっていったので、下のきょうだいたちが当たり前にしてもらっていることも自分のときはなかったなぁとか。不公平感とか不平等感を感じることが多かったと思います」
◆養父に「見放される恐怖」で心が動いた
養父もまた、何もせずに放置していたわけではない。不動産関係の事業を展開していたため、叶斗さんを見かねて宅建に挑戦させた。「養父の会社の社員にしてもらって、『宅建の勉強をしたら1時間1000円やるぞ』なんて言ってもらったこともありました。けれども、お金が目的で勉強するというのができなくて。結局、他の仕事で稼いで、勉強はやらなくなってしまったんです。そうしてのらりくらりしていた矢先、また事件を起こしてしまって……。『次は非行に走らない』と約束を破る形になってしまったんです。何かを言われたわけではないのですが、『このままでは養父に見放される』と思いました。そこで、宅建の勉強を再開して合格し、自分の覚悟を見せたんです」
養父を失望させたくない――そんな思いで20歳の叶斗さんが勝ち取った国家資格だった。

