◆弁護士になって得たいものはお金ではなく…

「まだ少年だった僕の事件を担当してくれた弁護士の先生が『君は弁護士に向いていると思う』と言ってくれたんです。でも当時は、弁護士になれるとは夢にも思いませんでした。勉強は苦手だったし、どうして先生は『向いている』と言ってくれたのか、今でも不思議に思います」
だが叶斗さんが法曹を目指したきっかけを聞いたとき、「向いている」理由が筆者には少しだけ理解できたように感じた。
「僕には、みずからの“ヤンチャ”で家族を心配させた過去があります。自分自身、社会に役立つ人間ではなかった自覚もあります。そしてこの社会には、現在、同じように何かしらのきっかけで能力を活かすことができない人、自らの能力に気がつくことさえできない人、恵まれない環境にいてなかなか将来を描けない人がたくさんいるのだろうと思います。
正直、弁護士になって得たいものは、経済力ではなく、影響力なんです。影響力を持つことができれば、こんな僕でもひとかどの仕事ができるようになったという生き方を伝えることができます。今は思い通りにならなくても、人生を諦めずに進んでいきたいと願う人たちのために、力を注ぎたいと思っています」
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合格を知らせるため、叶斗さんが最初に電話をかけた相手は養父だったという。「裏切りたくない人がいれば、人は生まれ変われる」。彼のその言葉に、立ち直りのヒントがきっとある。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

