「侮辱」で削除できる条件
■「侮辱」とは
侮辱は、具体的な事実を摘示せずに、他人を軽蔑するような価値判断を表示する行為です。法律上、刑法231条(侮辱罪)および民法709条・710条(不法行為)の両方で問題となります。
SNSでの誹謗中傷が原因で著名人が亡くなるという痛ましい事件が起きたことなどを背景に、2022年、侮辱罪の法定刑が引き上げられています。
この厳罰化によって、侮辱罪の公訴時効も1年から3年に延長され、これまで以上に悪質な投稿者に対して刑事責任を問いやすくなりました。
■「侮辱」と認められるための条件
侮辱が成立するためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
ア.公然と:名誉毀損の場合と同様、不特定または多数の人が認識できる状態であることが必要です。
イ.人(法人も含む)を侮辱した:事実を摘示することなく人に対する抽象的な軽蔑的表現をすることです。いわゆる悪口や罵詈雑言がこれにあたります。
■「侮辱」の具体例
・「O社長は社会のゴミ」「P社長は無能だ、キモい、死ね」などの書き込み
名誉毀損との違いは、「具体的な事実の摘示」があるかどうかです。
侮辱の内容が、人種・国籍・民族・宗教・年齢・障がい・性的指向などを理由にした中傷や蔑称の場合はヘイトスピーチとして、罵詈雑言を含む攻撃的なコメントである場合は嫌がらせのレビューや不快なコンテンツとして、掲示板の運営会社等のポリシーに抵触します。
したがって、このような場合は「侮辱」を理由として削除請求できます。
なお、意見論評は事実の摘示ではないので名誉棄損ではなく侮辱に該当するかのように思われますが、意見論評の域を逸脱する場合や、意見・論評の前提としている事実が真実でないことが証明される場合は、民事上の名誉棄損が成立する可能性があります。「侮辱」は、表現の意図の解釈に左右されやすく立証が難しい点があるため、名誉棄損を理由に削除申立てをすることが一般的であると思われます。
「プライバシー侵害」で削除できる条件
■プライバシー侵害とは
プライバシー侵害は、個人の私生活上の事柄を、本人の同意なくみだりに公開する行為です。法律上、民法上の不法行為として問題となります。
一般的に人が公開を望まないような私的な情報を本人の同意なく公開する行為は、プライバシー侵害として、投稿の削除や損害賠償請求の対象となります。
■「プライバシー侵害」と認められるための条件
プライバシー侵害が成立するかどうかは、有名な裁判例(「宴のあと」事件)で示された、以下の3つの要件を基準に判断されるのが一般的です。
①私生活上の事実、または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄であること
②個人の私的な領域に属する情報であること
③一般の人々に未だ知られていない事柄であること
■「プライバシー侵害」の具体例
個人の氏名、住所、電話番号、メールアドレス、家族構成、病歴、過去の犯罪歴、顔写真などの私生活上の事柄を本人の同意なくみだりに投稿された場合は、「プライバシー(個人情報)の侵害」を理由として削除請求をすることができます。
なお、過去の犯罪歴はプライバシーの中でも最も重要な情報である反面、社会的に関心が高い情報でもあるため、掲示板の運営会社等が削除請求に応じないケースも多いです。
しかし、犯行時から年数が経過している場合などは、請求の方法によっては削除に応じてもらえる場合もあります。
森 大輔
森大輔法律事務所 代表弁護士
