
退職金などまとまったお金の使い道として、「住宅ローンの繰り上げ返済」を挙げる人は少なくありません。毎月の“借金”から解放されることは心理的なメリットが大きい一方で、資産形成を長期的な視点でみると、「繰り上げ返済をしないほうがいい」ケースも……。磯山裕樹氏の著書『夫婦貯金 年150万円の法則』(青春出版社)より、繰り上げ返済を検討する際の5つのポイントと、繰り上げ返済以外の選択肢そ紹介します。
住宅ローン「繰り上げ返済」検討時の〈5つの判断軸〉
住宅ローンを繰り上げ返済するかどうかは、合理的、気持ち、税金、お金の流れ、生命保険の5つのポイントを押さえて総合的に考えることが大切です。総合的に考えても、私は繰り上げ返済をしないほうがいいと考えていますが、「こんな人はしてもいいのでは」ということについてもお伝えしますので参考にしてみてください。
1.合理的に判断
投資を勉強して実践できる人は、低い金利でお金を借りたままにしておき、繰り上げ返済をせず、そのお金を投資したほうが合理的です。お金を投資せず、現金や預金で保管している人は、繰り上げ返済をしてもいいと思います。
2.気持ちで判断
第1章で、住宅ローンの返済がないことが、長期で資産を最大化することよりも経済的な自立を感じられたというお話をしました(※)。投資を性格的に受けつけない人、借金が減ることが毎日の安心につながる人は、繰り上げ返済をしてもいいと思います。
※『夫婦貯金 年150万円の法則』(青春出版社)第1章より抜粋
『サイコロジー・オブ・マネー』の著者は住宅を現金で購入しています。この著者がお金持ちであることを伝えたいのではありません。理論的には、低金利で住宅ローンを借りて、余った現金を使って投資でより多くのリターンを出すことが正解です。なぜ、理論的な正解ではなく、現金で家を購入したのでしょうか? その理由は次のように書かれています。
〈ローンを組まずに家を所有することで生まれた自立した気持ちには、低金利の住宅ローンを活用することで得られる経済的利益をはるかに上回るメリットがあった。私たち夫婦にとって、毎月のローンの返済がないことは、資産を長期的な投資によって最大限増やすよりも気持ちがいいことであり、経済的に自立していると感じられたからだ。〉
理論的な正解よりも、ローンを組まずに家を所有することで生まれる自立した気持ちを重視して決めたことが家族の幸せにつながっています。
3.税金面から判断
住宅ローン控除の期間は繰り上げ返済をしないほうがいいでしょう。
4.お金の流れから判断
住宅ローンを頑張って繰り上げ返済したあとに、金利3%の自動車ローンを組んでいる、教育資金が足りなくなり金利2%の教育ローンを借りていることがあります。この場合、住宅ローンを繰り上げ返済せず、自動車ローンや教育ローンを組まないようにするほうがよいのは一目瞭然です。
住宅ローンの金利は他のローンの金利より低く設定されているので、他のローンを組む可能性がある人は、繰り上げ返済しないほうがいいでしょう。
5.生命保険から判断
住宅ローンは団体信用生命保険(以降、団信と表記)がついており、万が一亡くなった場合など、一定の条件になると住宅ローンを支払わなくてもよくなります。繰り上げ返済したあとすぐに、住宅ローンの団信の条件に該当した場合、しなければよかったと後悔する可能性があります。
ただ、民間保険は健康な人は安く加入できるので、繰り上げ返済をして保障が足りなくなるのであれば、民間保険で備えられます。病気などで新たな生命保険に入れない、割高な保険料になる人は、団信のほうが有利になる可能性もあります。
繰り上げ返済するかどうかは、5つのポイントを押さえて、自分で総合的に考えて決断しましょう。
「銀行に直接交渉」で住宅ローンの金利が下がるケースも
住宅ローンの借り換えは、複雑な手続きに費やす時間とコストがかかるので、金利だけの比較ではなく、時間とコストを総合的に考えて実行しましょう。
おすすめは、今、住宅ローンを借りている銀行へ金利交渉することです。必ず金利が下がるとは限りませんが、面倒な手続きが少なく、金利を下げられる可能性があります。
金利の引き下げ交渉の場合は、費用は数万円ですみます。ただ、何も持って行かず金利を下げてくださいでは難しいので、他の銀行で借り換えした場合の見積もりや条件を持参し、借り換えを本気で考えていることを示しましょう。
出てきた条件と借り換えした場合の条件を検討して、住宅ローンを今の銀行で続けるのか、変更するのか決めるのが楽です。残高4000万円、35年の住宅ローンの場合、金利が0.1%下がるだけで、年間約2.2万円、トータル約78万円の支払いが少なくなります。
少しの時間を作って行動するだけで、年数万円変わる可能性があります。
磯山 祐樹
磯山FP事務所
代表
