寒さから外出が減り、動くのも億劫になりがちな冬。冬は認知症のリスクを高める要因が増える季節と言われています。寒さが脳に与える影響や、冬こそ意識したい脳のセルフケアについて、早期からの認知症予防を提唱する医師・今野裕之さんに伺います。
寒さが脳に与える影響
冬は体調が揺らぎやすく、外出の機会も減る季節。実は、認知機能低下や認知症リスクが高まる季節とも言われています。
より早期からの認知症予防(ブレインケア)を提唱する医師の今野さんによると、その背景には、次の3つの要因が考えられるそうです。
1.血圧が上がりやすい
気温が下がると血管が収縮し、血圧が上がりやすくなります。
「高血圧は認知症の重大なリスク要因の一つです。血圧が上がると脳血管に負担がかかり、微細な脳出血などを引き起こし、脳血管性認知症のリスクを高める一因となります」(今野さん)
50代などの早期から血圧を安定させておくことが、脳の健康維持の大切な要因の一つです。
2.活動量の低下
寒くなると外出が減り、どうしても運動不足になりがちです。運動量が落ちると脳への血流が低下し、認知機能の衰えにつながります。
また、人と話す機会が減ることも脳の刺激不足につながります。
こうした生活リズムの変化は、50代にとって将来の脳の健康リスク要因になり得ます。
3.睡眠の質の低下
冬は日照時間が短いため、体内時計が乱れやすい時期です。体内時計の乱れは、寝付きの悪さや中途覚醒の原因になり、睡眠の質を低下させる可能性があります。
「睡眠の質が低下すると、脳のゴミと言われるアミロイドβの排出が妨げられ、将来の認知症リスクにつながるとされています」(今野さん)
アミロイドβは、脳内で作られるタンパク質の一種で、アルツハイマー型認知症の原因と考えられています。健康な人の脳でも作られる物質ですが、分解・排出されずに蓄積されてしまうと、認知機能の低下につながる可能性があります。
脳を元気にする4つの生活習慣
脳のストレス要因が増える冬ですが、その一方で、脳の健康維持のためにできることもたくさんあります。
ポイントは、生活習慣のちょっとした工夫です。今野さんに、冬に意識したい生活習慣でのセルフケアを教えてもらいました。
1.寒さを我慢せず、家の中でも体を冷やさない工夫を
気温が下がると血圧が上がりやすくなりますが、寒暖差による血圧の急激な変動も、脳にとって大きな負担になります。冬に脳血管のトラブルが増える背景には、この血圧の変動も関係しています。
WHO(世界保健機関)のガイドラインによると、室温は18度以上が推奨されているので、まずは家の中を心地よく保つことが大切。寒さを我慢せず、エアコンやヒーターなどの暖房器具を使い、重ね着やひざ掛け、カイロなどで「冷えをためない工夫」を。廊下や脱衣所など温度差が大きな場所は、小型ヒーターで暖めるなどして急激な血圧上昇を防ぎましょう。
また、どうしても寒暖差が生まれてしまう冬の外出時は、
- 暖かい部屋からすぐに外へ出ず、気温差がまだ少ない玄関で数十秒ほど体を慣らしてから移動する。
- マフラー、手袋、厚手の靴下などで、首元や手足など「冷えやすい部位」をしっかり防寒する。
などの対策を心掛けましょう。
2.寒い日こそ室内でできる運動で血流アップを
軽い運動は血流をアップさせ、脳の活性化につながります。
寒い冬は、無理に屋外で運動をしなくても大丈夫。テレビや動画を見ながらの「ながら体操」、踏み台昇降運動、階段の上り下りなど、室内でもできる運動を取り入れましょう。
運動量の目安は毎日15~20分ですが、1日5分程度でも意識して体を動かすと、血流アップ効果が期待できます。楽しく続けられそうな運動を見つけてみましょう。
3.朝日を浴びて体内時計を整える
毎朝カーテンを開けて朝日を浴びる習慣をつけることで、体内時計がリセットされ、夜の睡眠が整いやすくなります。
朝日を浴びる時間は、 まずは 15秒からでも効果的。できれば5~15分程度、目から光を取り入れるのが理想的です。曇りや雨の日でも光の量は十分にあるので、天候に関係なく毎朝の習慣にするといいでしょう。
就寝前のスマホは控える、入眠を促すナイトルーティンを取り入れるなどの工夫もおすすめです。
4.外出が減る季節でも、意識的に人と会話する
人との会話は脳に良い刺激をもたらしてくれます。
寒くて外出が億劫なら、電話やオンラインでの短い会話でもOK。家族や友人と少し話すだけでも脳の活性化につながります。
買い物やゴミ出しで会ったご近所さんに挨拶をする程度でも、脳に刺激を与えられますよ。

